橋下改革と教育

 競争原理を導入した「教育基本条例」、「君が代」の強制や口元調査、教員不足で授業に穴があく異常事態…。
 「教育日本一」を掲げてきた橋下徹大阪市長と「大阪維新の会」のもとで、大阪の教育はどうなっているのか

競争・選別主義

 橋下氏の「教育改革」の方向の一つは、競争主義・選別主義の持込みです。

 その象徴が「府立学校条例」。
3年連続定員割れの府立高校を「再編整備の対象とする」と明記。

 日本共産党や民主団体による条例反対の宣伝や署名でも、批判や不安の声が寄せられました。

 橋下氏は「選ばれなかった学校は退場してもらう」
「選ばれなかった学校が自分たちには存在意義があると言い続けるのはおかしい」と言い放ちます。

 定員割れの学校の多くは、いわゆる“困難校”や交通の便の悪い学校です。今年度は138校のうち17校が定員割れとなっています。
橋下流の高校つぶしは、効率主義であり、弱い立場の子どもたちと不利な地域の学校の切捨てです。


高校無償化も競争

 橋下氏は「生徒が集まらない学校は退場してもらう」とのべ、公立、私立を同じ条件で生徒の獲得競争に走らせることを狙います。

 私学への経営補助を全国基準より1割削減。
教育条件の改善や学費を低く抑えている学校への加算をやめ、生徒数に応じて配分する基準に変更しました。
 私学は募集定員を超える高校と定員割れが続く高校に二分化しました。
定員超過の学校では45人学級の詰込みや、教員の多忙化、非正規教員の増加などの事態が起こっています。

 大阪私学教職員組合の岩井繁和書記長は「公立・私立間に市場主義的な生き残り競争のシステムがつくられました。
選択の自由と競争・自己責任を原則とする新自由主義の政策によって大阪の高校全体を縮小しようとしている」と批判します。

小中学校選択制

 橋下市長は小中学校にも、学校選択制と学力テスト結果の学校別公表で、「競争」を持込もうとしています。

 08年、全国いっせい学力テストで大阪府が2年連続低位だったことで「このざまはなんだ」と激怒し、市町村別に学力テストの結果公表を迫ったのに続いて、学校別公表まで狙っています。

 同時に、橋下氏は「自立する個人、自立する地域という価値観を徹底するために必要」とのべ、学校選択制の導入を方針にしています。

 全国で学校選択制を実施している自治体は1割強。
教育内容と無関係に学校が選ばれ、一部の学校に人気が集中するなどとして、東京都杉並区が4年後の廃止を決めました。
橋下氏の方針は、この見直しの流れに逆行しています。

 橋下氏は選択制の導入は区ごとに8月に就任する公募区長が決めるとしています。
「保護者の選択にさらして自然に統廃合を促す手法として学校選択制がある」と小学校の統廃合の促進を狙っています。

 全市立小学校の約3分の1にあたる101校が小規模校として統廃合の対象とされています。

■統制・政治介入狙う