■齊藤しげのぶからの贈り物「ちょっといい話」(毎週金曜日更新)
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水路づけ

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 心理学用語に「水路づけ」という言葉があります。
 初めからあまり大きなことを依頼すると、高い交換条件を出されたり、断られたりします。ところが、初めは小さなことを頼んで引き受けてもらい、だんだんと大きなことを頼むようにすると、引き受け手くれる確率が高くなります。これも水路づけの一例です。
 こんな実験例があります。初めは家の前に小さな看板を立てさせてもらい、だんだんと大きくしていって、ついには家が隠れるほど巨大な看板を立てさせてもらうことに成功した。
 最初は小さなことでいいから、こちらの説得を受け入れてもらい、とにかく水路をつくることが大切だといういい例です。
 初めてのお客様にアポイントを取るときに、「一時間お時間をいただけませんか」と言えばなかなかOKを取るのは難しいが、「五分でかまいませんが」と頼めば案外すんなりと聞いてくれるものです。いったん会ってしまえば、後はあなたの腕次第で時間は伸ばせます。
 何事も最初から大きな成果を期待せず、まずは小さな突破口を開くことです。水路さえつけば、後はあなたの誠意次第です。
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七転八起と一転0起

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 「七転八起」の失敗は、秋になると木々が葉を落とし、自らの肥料にするようなものである。定期的に肥料をやらなければ、大きく、たくましくは育っていかない。
 「一転0起」の失敗は、肥料のやりすぎで立ち枯れになるようなものである。取り返しのつかない失敗はしてはならない。「法律違反」「悪事に手を出す」「事前に相談しなければならないことを無断で行う」「会社の看板に泥を塗る」などである。
石田梅岩は、「一升の水に、一滴の油をたらせば、その一升の水すべてを捨てなければなりません」と、うまい表現で警告している。
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知足

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 足るを知る。
「私は幸せだ。満ち足りているから、これ以上もっと欲しいとは思わない。これで十分満足だ。」こんな風に言うと、随分お金持ちの贅沢な暮らしをしている人のセリフのように聞こえますが、違います。
 少しの「足りる」で満足していることを言っているのです。
 足りないと思っている人は、本当に足りてませんか。足りていると感じられれば、あなたはすぐに幸せになれるのに。
 我慢するのではないのです。足りていることに気付く「知足」。贅沢にきりがない人は弱い。ほんのちょっとで満足できる人は柔軟でパワフルです。
 足るを知る人は幸福に最も近い人です。
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{世話」の語源

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 「世話」という言葉は、古代インドのサンスクリット語の”セイバー”が語源だそうです。
 ”セイバー”には「横」という意味があります。ですから、「世話をする」というのは、世話をする人も、世話を受ける人も、横に並んだ同等の立場であることを意味します。
 老人問題が話題になっていますが、お互いに順送りの現世を生きているわけですから、世話をし合うことが大切だと思いまうす。そこに、心の安らぎが生まれるのです。
 鴨長明は八百年前にこう記しています。
「富めりといえども願う心やまねば貧しき人とす。貧しけれども求むることなければ富めりとす」
 財貨がいくらあっても心の安らぎを得られるものではない。
 心の安らぎを得るには、自分は一人で生きているのではなく、沢山の人によって支えられ、持ちつ持たれつの関係の中で「生かされている」のだと気づくことです。
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 肩書や地位、財産、名声などはすべてはかなく消えていきます。レッテルがその人を輝かせるものではありません。問題は本質です。
 人はあるところまで行くと、利得や恐怖、権力だけではついてきません。もはや得るものもなく、時には不利と分かっていても、その人に徳があればついていきます。
「徳とは行である。行とは見返りを求めずただ行うことである」と道元は言っています。
地位が高くなればなるほど、必要なのは徳を磨くことです。
 
 男が仕事をするときは、常に捨て身でなければならない。
 捨て身とは、何も欲しがらぬことである。
 損得、勝ち負けという、人間の物差しを捨てることである。

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