ビスケット
 ビスケットという言葉は、国によって異なった意味を持っています。日本では主として幼い子供のおやつで、大人は余り口にしませんでした。戦後はバターや卵のたっぷり入ったクッキーが現れて、子供だけでなく、大人も食べるようになり、「どこそこのクッキーは美味しいわよ」などと話しているのは、お嬢さん・奥様方がおられます。それで、クッキーはビスケットより高級品であるというように思っている方が多いと思います。フランス語では「ビスキュイbiscuit」といって、昔は軍隊や船乗りのための糧食の堅焼きパンの事でした。語源的にいいますと、ビスは二度とか2回という意味の接頭語で、キュイは焼くという動詞キュイールcuirの過去分訶です。またビスケー湾から船出する船員達が持って行ったので、ビスキュイと呼ぶようになった、とも言われています。つまり船乗りや軍隊の携帯食ですから、保存に適するよう、脂肪を少なくして、十分に焼いたものでなければなりません。イギリスでも、ビスケットは薄く焼いた乾き菓子です。

クッキー
 クッキーは、オランダ語のクークから出た言葉で、フランスでは「プティ・フール・セックー乾き一口菓子」と呼ばれています。これはお茶菓子として出発したものですから、保存より味に重点をおき、バターの多い生地で作られました。
日本のせんべいでも、卵がたくさん入っているのは口当りがふんわりとしておいしいように、クッキーもバターの多い生地で作った方がさっくりしたものになります。その代わりに日持ちが悪く、保存食というわけにわいきません。
そういうことから、脂肪分の多い上等の乾き菓子が クッキーである、と考えられるようになりました。一方、イギリスでは比較的早くビスケットを機械で大量生産するようになりましたので、なおさら安物というイメージが強くなりました。
しかし今日では、いろいろなビスケット、クッキーが作られるようになり、必ずしも安物、上等という区分はできなくなりました。それどころか、フランスではビスキュイというスポンジ生地とかアイスクリームの種類のビスキュイ・グラッセを指すことの方が多いようです。クッキーとビスケットは質的な違いではなく、単に言葉の違いだと考えてよいでしょう。