国家予算の2倍以上

 政府は、1960年に、茨城県東海村で50万キロワットの原発が重大事故を起こしたさいの被害推定をおこなっていました。
「大型原子炉の事故の理論的可能性及び公衆損害額に関する試算」
と題する244ページにのぼる詳細な「レポート」です。
その結果は、恐るべきものでした。

 「レポート」に、被害の推定試算表が出ていますが、
数百人の死者、
数千人の放射能障害者、
400万人の放射能被害による要観察者が生じうる。
損害額は、当時の日本の国家予算の2倍以上、3兆7300億円にのぼる。
これが、日本政府がおこなった原発の重大事故に関する被害推定なのです。


被害推定隠しつづけ

 あまりにも衝撃的な被害の大きさにおののいて、
政府は、国会にもそのごく一部を報告しただけで、肝心の被害推定については国民に隠しつづけてきました。
この「レポート」は、19年後、
日本共産党の努力で掘り起こされ、
1979年4月9日付の「赤旗」で「幻の被害推定報告書」としてスクープされました。
それでも政府は、被害推定をしたこと自体を否定し続けました。
政府がこの「レポート」の存在を公式に認めたのは、さらに20年たった1999年のことでした。
被害推定をしながら、何と39年間も国民に隠しつづけてきたのです。

安全神話垂れ流し

 この「レポート」が1960年に正直に公開されていたら、私は、日本に現在の54基もの原発をつくることはできなかったと思います。
原発事故の恐るべき危険を知りながら、都合の悪いことは国民に隠す。

「原発は安全」だという「安全神話」を垂れ流して、国民に原発をおしつけた歴代政権の罪はあまりに深いといわなければなりません。
真実を隠蔽し、ウソと虚構のうえにつくられた原発は、なくすしかありません。
◆半世紀の闘い
◆89周年講演