憲法25条のものさし

 「1人の重症結核患者の訴えに無数の人々の共感が寄せられ、最低賃金の確立、社会保障拡充を要求する巨大なうねりと共に、憲法25条を問う国民運動に発展し、東京地裁で勝訴した。
 
 今日の生活保護基準は、国民の長年の努力の成果であって、その基準は憲法25条に定める『健康で文化的な最低限度の生活』の”ものさし”であり、それは国民の権利である」

 朝日健二さん(75)が6月、早稲田大学公開講座で講義した一節です。

社会保障予算削減と
自殺急増時期が符合

 朝日さんは、訴訟運動が一段落した後、東京保険医協会に勤めました。
 医療制度や介護問題の専門家として社会保障拡充の運動に携わってきました。

 この10年ほどの情勢は、朝日訴訟の時代に似てきたと言います。朝日さんは自作の資料を手に語ります。

 自殺者の数50年間の推移を示す折れ線グラフを示しました。
 自殺者が増える大きな山が三つ。

 一つ目は
 1954年から朝日訴訟一審勝訴までの7年間。
 次は80年代半ば、三つ目は90年代から今日までの期間です。

 朝日訴訟の時代、自殺者が急増する54年は防衛庁・自衛隊が設置され、同時に社会保障予算全分野にわたって大ナタが振るわれました。

憤激呼んだ国の通知
生存権守れの運動へ

 生活保護費のうち医療扶助は徹底的に締め付けられました。

 「他府県の結核患者は生活保護患者として入院させるな」と言う国の通知が出され、重症患者の付き添い制度も廃止。

 全国の生活保護患者の憤激を呼び起こし、朝日茂るさんを憲法25条の生存権を守れと言う訴訟行動に突き動かしました。

権利は戦う者の手に

 三つめの山
 自殺者が連続して3万人を超えている最近12年間は、社会保障が「構造改革」でズタズタにされ、雇用もボロボロにはかされ、格差と貧困が広がりました。

 自衛隊が海外に派兵され軍事費は聖域のまま、社会保障予算は毎年2200億円ずつ削減されました。
 生活保護費の老齢加算や母子加算が廃止されました。

 全国の高齢者・シングルマザーが「生存権裁判」を提訴。運動と世論に押されて母子加算は復活。

 老齢加算についても福岡高裁は6月14日、同加算廃止は違法との判断を示しました。

 朝日さんは、「朝日茂さんは『権利はたたかう者の手にある』と叫びながら逝きました。いま、朝日訴訟のように運動を大きく前進させなければなりません」

しんぶん赤旗日刊紙
10年10/21号要約

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