■齊藤しげのぶからの贈り物「ちょっといい話」(毎週金曜日更新)
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▼タイトル
言葉一つで

▼本文
 つくば市の高校一年生が交通事故で重体となり、意識は戻らないだろうと言われた。しかし、家族はベッドサイドで毎日の大半を共に過ごして、話しかけ愛撫を続けた。すると、事故後約一ヶ月目に、はじめて左半身がピクリと動き、二ヶ月目には意識を取り戻した。
 この頃、左半身は絶対に動かないと担当医に告げられたが、リハビリと看護と励ましの言葉のお陰でほぼ正常に動くまでに回復し、二年後復学した。
 ところが、夏休みを前に教師から、「一生懸命頑張っているようだが、右脳が大部分挫傷していては、皆についていくのが大変そうだね。君のようなハンディを背負った子のための学校があるから、そこへ転校することも考えたほうがいいよ」と言われた。
 すると、その日の夕方、家に帰ると、それまではほとんど正常に動いていた左半身が動かなくなってしまった。
 人の心の動きの大切さを知らない人は、知らないうちに相手を傷つけてしまうことがよくあります。それが善意だけに余計にやるせない。脳は快の時はよく活性化され、機能が向上します。自他ともに快にするよう心掛けたいものです。
▼タイトル
百万分の一の命

▼本文
 夕暮れ時、人影の途絶えた海岸を歩いていると、遠くのほうに誰かが立っているのに気づいた。近づいてみると、メキシコ人の男が何かを拾っては海に投げ入れていた。よく見ると、それはヒトデだった。男は、引き潮で波打ち際に取り残されてしまったヒトデを、一つ一つ拾い上げては海に投げ入れていたのだ。
 どうしてそんなことをしているのだろうと不思議に思い、男に話しかけた。
 「やあ、こんばんは。さっきから気になっているんだけど、何をしているのか聞いてもいいかね?」
「ヒトデを海に帰してやっているのさ。見ろよ。たくさんのヒトデが波で打ち上げられて、砂浜に取り残されているだろう。俺がこうやって海に投げてやらなかったら、このまま干からびて死んじまうよ」
「そりゃあ、もっともな話だが、この海岸だけでも、何千というヒトデが打ち上げられているじゃないか。それを全部拾って海に帰してやるなんて、どう考えても無理な話じゃないかな?それに世界中には、こんな海岸が何百もあるんだよ。君の気持はわかるけど、ほんの一握りのヒトデを助けたって、何にもならなと思うがな」
 これを聞いた男は白い歯を見せてニッと笑うとそんな言葉にお構いなしに、またヒトデを拾い上げて、海に投げ入れた。
「今海に帰って行ったヒトデは心から喜んでいるさ」
 そう言うと、また一つヒトデを拾い上げ、海に向かって投げ入れたのだった。
▼タイトル
皿洗い

▼本文
 ある人が、長年、悩み事を抱えて困っていた。ほとほと困り果てて、自殺まで考えていた。ところが、妻は夫の悩みなど、どこ吹く風で鼻歌を歌いながら食器を洗っていた。
 音はカチンときた。夫が悩んで死のうとさえ思っているのに、ノンキにもほどがあると。しかし、妻は18年間も食器を洗っているが、うんざりどころか、いつも楽しそうにしている。もし、これから18年間も皿洗いをしなければならないと考えたらどうだろうか?
もし、一食ごとに洗わないで置くとしたら納屋一つでは足りないだろう。
妻が皿洗いを気にしないのは、一度に一食分洗えばよいからだ。夫は悩みも問題も皿洗いと同じだと気付いた。昨日の食器も、今日の皿も、さらに明日の食器まで一度に洗おうなどと考えたら、どうにもならなくなってしまうと悟った。 
 昨日の重荷に、明日の重荷を加えて、それを今日背負うとしたら、どんなに強い人間でも参ってしまう。何とか愚かなことをしてきたのだろうと反省した。
▼タイトル
水路づけ

▼本文
 心理学用語に「水路づけ」という言葉があります。
 はじめからあまり大きなことを依頼すると、高い交換条件を出されたり、断られたりします。ところが、はじめは小さなことを頼んで引き受けてもらい、だんだんと大きなことを頼むようにすると、引き受けてくれる確率が高まります。これも水路づけの一例です。
 こんな実験例があります。はじめは家の前に小さな看板を立てさせてもらい、だんだんと大きくしていって、ついには家が隠れるほどの巨大な看板を立てさせてもらうことに成功した。
 最初は小さなことでいいから、こちらの説得を受け入れてもらい、とにかく水路を作ることが大切だといういい例です。
 はじめてのお客様にアポイントを取るときに、「一時間の時間をいただけませんか」と言えばなかなかOKを取るのは難しいが、「五分でも構いません」と頼めば案外すんなりと聞いてくれるものです。いったん会ってしまえば、後はあなたの腕次第で時間は伸ばせます。
何事も最初から大きな成果を期待せず、まず小さな突破口を開くことです。水路さえつければ、後はあなたの誠意次第です。
▼タイトル
言葉のご馳走

▼本文
*感謝の言葉〜「いや、忙しいところをありがとう」。「助かったよ、ご苦労さん」
 この一言で、苦労も吹き飛んでしまいます。何度言っても言いすぎることはない。
*相談する言葉〜「この問題は、若い君の意見を聞きたい」。「あなたはどう思う?」
 相談されれば、誰でも嫌な気はしない。当事者意識も出て、やる気が出てくる。
*期待と激励の言葉〜「ここは一つ、君に期待するしかない」。「頑張りなさいよ」
 こんな言葉をかけられたら、多少の心配はあっても自ずと元気と自信が湧いてくる。
*信頼する勇気〜「ここは君に任せた。頼むよ」。「君ならきっとできるよ」
 任されて、「よし、一丁やってやるか」と頑張らない人はいないはずだ。
*誉め言葉〜{よくやった」。「ここのところが何とも言えないね」
 誉められれば、自信が湧いてきて、積極的になる。そうすれば成功の確率は高まる。
 この五つの言葉は、素晴らしい効果を発揮する黄金の言葉と言われています。あなたは「言葉のご馳走」を惜しんではいませんか?言葉は使っても減らない大事な宝物です。  

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