意見判決活かす番
「元イラク派兵差止」
訴訟の会
代表池住義徳さん

いけずみ・よしのり
1944年、東京都生まれ。
立教大学卒。
世界YMCベトナム難民救済・復興協力事業でベトナム・サイゴンでサービスワーカーとして勤務。
NGOでの活動、南山大学講師などを経て、現在、立教大大学院教授。


大事な二つの内容

 昨年(08年)4月、名古屋高裁が出した自衛隊イラク派兵を違憲とする判決は二つの内容を含んでいます。

 一つは
 行政府の行為の一部を、司法が、他国が行う戦争への加担・協力であり憲法違反、と断定したことです。

 二つ目は
 平和的生存権を具体的な権利として認めたことです。

 平和でなければ、憲法第三章に書かれている全ての権利が、制限、否定される、つまり平和であること、平和の中で生きることは全ての権利の元になると言っています。

 戦争に加担・協力しないことも平和的生存権だとした判決で、これは凄い。

 この判決をどう使い活かすのか、今後は私達市民の出番です。

「海賊対処」口実に

  判決から1年もたたないうちに、ソマリア沖の海賊問題が浮上しています。
 海上自衛隊の護衛艦が現地で活動し、海外派兵を恒久化する法案が審議されています。

 ソマリア沖の問題は、海の問題ではなく、政治、経済、保安体制が壊滅された”陸”の問題です。
 
 英国とイタリアによる分割植民地支配を終わらせた1960年の独立後、東西冷戦構造の下で米国とソ連が武器を供与し、91年以降は内戦となり、無政府状態が18年続いている。

 海賊問題は国際社会、とりわけ先進国に責任があると言えます。
 
非軍事対応で解決を

 海賊行為を武力で抑える軍事的対応を突出させるのは、本末転倒です。

 日本は90年代に、マラッカ海峡において、財政、技術援助を沿岸諸国に行い、海賊行為を激減させた経験を持ちます。

 憲法9条をもつ国として、非軍事対応で海賊対策を講じるリーダーシップがとれるのです。

 「海賊対処」新法案は、武器使用基準が大幅に緩和されています。
 
 イラク派兵違憲判決は、米兵と物資の輸送について憲法違反だと判断したものですが、今回は、より直接的な武器による威嚇、武力の行使に繋がります。
 イラクのケースでも踏み込んでいなかったものです。

問題点を市民の間に

 名古屋高裁判決の後、全国で400回近く報告後援会が行われ、現在も続いています。

 ソマリア沖への自衛隊派兵について、問題点を市民の間に広めていきたいと思います。


聞き手 遠藤誠二
赤旗日刊紙
09年5/6号要約

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