■戦後23年、まだ12〜15坪程のプレハブ住宅が盛んに建てられていた時代、西欧と北欧の間にある国、デンマークは夢のような豊かで美しい国でした。

その基盤にあるのが豊かな住環境でした。
まさに、国の理想とする『平和と健康と豊かさ』を象徴するものでした。

自然のエネルギー空間と豊かな住環境は豊かな家庭をつくり、健康で豊かな家庭の集合体が豊かな社会をつくり、幸せ度世界一の平和国家をつくりあげている姿にカルチャーショックと感銘を受けました。

デンマークのユトランド半島のとある街の建築設計事務所に勤務する傍ら、当時のソ連やヨーロッパ各地、そして北米を廻る内に、
益々平和や戦争や民族問題、経済、貧困や豊かさというものを意識していく中、幸せ度世界一という国デンマークの住環境と完成した理想社会を考えるようになりました。

そして、住環境の改善を掲げて石油ショックの翌年、昭和48年に帰国し理想の住環境の実現に挑戦。

しかしそこには、法律と経済と社会構造の歪みが障害として立ち塞がり続けたのです。

しかし最大の要因は、お金と経済を至上主義とするのか、平和と健康と豊かさをスローガンにするのかにありました。

デンマークでは国の政治や経済活動全てにおいて、その目標が『平和と健康と豊かさ』に即しているのかが基準となります。

住まいを作るにおいても、どういう家作りをしたら、その家に住む人が平和的に健康で豊かな生活が出来るのかが基本となり、それが建設産業の安定にも繋がるのです。

しかし、どういう家作りをしたら受注を取ることが出来、建設会社が利益をあげることが出来るか、ユーザーは如何にしたら安く手に入れることが出来るのかで住宅事情が成り立っています。

理想的な住まいづくりの法律やルールもなく、産業や経済活動のルールもないため、やむ無く利益中心の過当競争にさらされます。

居住性もなく、生体エネルギーを奪う過酷な化学物質の新建材環境と、益々増大する電磁波環境において、家庭が生命力を失い、同様の環境下と大気汚染で企業も活力を失い、
バブル崩壊当時の平成3年、幸せ度14番だった日本が、今や中国の80番を通り越して90番だそうです。

幸せ度8番のブータンは精神面の幸せ度は世界一だそうです。

■昭和57年、当時の建設省主催で省エネルギー住宅のコンクールを開催した時、ようやく行政が省エネに関心を持ち始めたことから、
最大の省エネは安い太陽熱エネルギーを住まいに応用する以前に、質の割に世界最高の建築費を費やし、しかも年間100万戸を建設する現在の日本の住宅の寿命を、
2〜30年から100年以上に延ばす居住性や耐久性の為の法律改正や産業の改革と、建物の高断熱化が最大の省エネと、個人と国家の利益に繋がるとの論文を作品と共に提出しました。

結果、この論文も評価され建設大臣賞を受章しましたが、変化や改革に疎い法律や産業構造の壁が弊害となり、未だに住環境は改善されることなく、むしろ健康度は低下の一途を辿っています。

デンマークでは50年前、100年前の建物が現在の価格で取り引きされる社会財産です。
住環境が健全で安定しているということは、そこには住む人達も家庭も健全で安定することになります。

■この『平和と健康と豊かさ』を国と企業と個人の目標とする時、医療もまた、如何なる医療を行うことが平和的であり、健康的であり、豊かであるのかということになり、北欧のようなお金の掛からない予防医学の発展に繋がって行くことになります。

今、問題の年金問題もしかり、巨大事業団をつくり巨額の金を集めて、25年もの間、高齢者還元と無縁の所に使われてしまい、いざとなったら巨額の金が消失して満足な年金の支払いに事欠くことになっているのです。

まさに、世界最大の振込み詐偽集団と言えます。

デンマークでは50%の所得税と、25%の消費税を国民投票で決めていますが、個別に年金や社会保険料、生命保険、出産費用、医療費、託児所から大学院までの費用、老人ホームから在宅介護費用、高速道路料金の果てまで徴収されることがありません。

さらに、免許証の書換えや車検制度、過度な交通違反取締りによる徴収等もありません。

少なく見える消費税の裏にはそれ以上の過大な徴収システムにより吸い上げられる構造があり、この利権構造が日本の政治改革を困難にしています。

■住環境のみならず、日本の政治改革には大変な障害となる構造があります。

こうした障害を乗り越えて日本を再生させるためには、消滅目前の日産自動車を健全な自動車会社に再生させた、しがらみのないフランス人のゴーン氏をあてたように、
幸せ度世界一を達成し究極の理想国家を維持しているデンマークに派遣政治家を依頼した方がしがらみもなく、改革が可能かもしれないと思う次第です。

■『北欧に学んだ住まいづくり』の執筆に当たっては、かつて、名古屋大学の経済学部長であり、市長選挙に立候補されていた横溝さんから執筆を勧められ、さらに5年後の、平成元年当時の住友銀行神谷町支店長をしておられた西谷氏に促されて書き上げました。

まさに、かつて内村鑑三先生が書かれた『後世に遺す遺産とデンマークという国の話し』のなかで述べている如く、人間にも国家にも何を理想理念としているかが大切です。

過去も現在も『平和と健康と豊かさ』を目標とする国のデンマークと、過去も現在も相変わらず『お金』を目標とする日本との間に、幸せ度世界一と90番の違いがあるのです。
金あれど今なお幸せになれぬ変わらぬ日本の姿があります。

■『北欧に学んだ住まいづくり』は北欧での生活体験を通して住環境と社会のあり方を書いたものですが、今なお新鮮なのは状況が変わってないからでしょう。

平成3年執筆当時、全国2,400余りの図書館と、600ヵ所余りの大学の工学部と医学部図書館に寄贈いたしました。
一人でも多くの人がすばらしい理想を実現し続けている国のあることを知って欲しいためでした。

また、理想国家達成の為には、国民のくじけることなく希望を抱き続けることも大切です。

未だに抜け道の見いだせない日本の為に、改めて『北欧に学んだ住まいづくり』を紹介いたします。