段階的に民営化を進める場合のスキームと課題について〜交通局〜

<段階的に民間事業者に譲渡するスキームについてに>

【現在】
(1)酉島営業所、鶴町営業所、住之江営業所はシテイバス鰍ノ管理委託
(2)井高野営業所は南海バスに管理委託
(3)守口営業所、中津営業所、住吉営業所は交通局直営
【第一段階】
(1)の酉島営業所、鶴町営業所、住之江営業所をシテイバス鰍ヨ随意譲渡
(2)と(3)は変わらず。
【第2段階】
守口営業所をシテイバスへ随意譲渡
井高野営業所、住吉営業所、中津営業所は公募により譲渡

・この手法で進めれば、職員は二段階目で一斉に転籍することとなるほか、
二段階目も早急に進めることで、早期の財政効果発揮が期待できる。
・また、廃止条例案との関係は、賛同の方向性が見定められれば、一段階目においては自動車運送事業会計の予算案の承認という形で合意形成が可能と考えられる。
・さらに段階的譲渡による部分的な民営化により、民営化に対する市民の安心感が醸成されることから、最終的な全部譲渡へのご理解を深めることにつながると考えられる。
・(検討事項)
一段階目では公営が残ることになるが、今後の経営リスクはもとより、公営での運営コストの抑制に限界があることや、管理委託によるコスト削減効果の縮小等による、直営営業所での収支の大きな悪化が見込まれる。このことから、再び市へ依存することとなり、市の財政負担の増大が確実で、早急に二段階目へ進めなければならないと考えられる。

これまで議会でどのような議論がなされたのか。〜交通局のまとめ〜

議会ではどのような議論がなされてきたのか。〜交通局のまとめ〜

●平成25年3月14日(交通水道委員会)
・バスは市民の足である。地下鉄と別になるのではなく、グループ会社・子会社化してしっかり守るべき。
・民鉄のスタイルからみて至極当然。オスカーを地下鉄が負担することになっても、バス会社を子会社化すれば地下鉄事業の収益になる路線を中心に考えていける。なぜ、あえて別々に民営化を目指すのか。

●平成25年3月26日(交通水道委員会)
・民営化した以上は公の関与も限界があるので、グループ経営する中で利益の最大化と路線の維持に対する責任を持ってもらうべき。
・バスを切り離して民間に譲渡することについて、非常にリスクが大きい。新しい会社の子会社にして、一緒にやっていくのが一番いい。
・地下鉄は独占でバス会社はダメだとはならない。市民に安心していただくよう運輸振興を使い、一体的な経営をしていただくという方向を考えるべき。そのことで、市民への5年後、10年後も移動手段はしっかりと確保されるという大きなメッセージになる。

●平成25年5月22日(交通水道委員会)
・競争性と言う公の発想で考えるため逆に民営化のメリットを出せない。グループ経営の観点から運輸振興にすべて任せ、多角化等の経営努力で補助金を必要としない運営を行わせることが、市民にとって最もメリットがある。
・オールリセットして民間譲渡するのではなく、例えば平成26年度に運輸振興鰍ィよび南海バス鰍ノそのまま譲渡すればよいのではないか。残り4営業所は市バスが残るが、2営業所は民間委託できる。委託後1年間の状況を見て、平成27年度にまた民間譲渡して段階的に民営化を図るという安全策を取ったらどうか。

●平成25年8月1日(交通政策特別委員会)
・段階的譲渡は課題があるならば、運輸振興に一括譲渡と決めてはどうか。
・運輸振興が市内のバス路線をすべて守り、多角化等経営努力によって、補助金を必要としない会社になることが、市民にとって最もメリットがある。
・段階的な譲渡に関する課題はどのようなものが考えられるか。

●平成25年10月4日(決算委員会)
・なし崩し的に一括譲渡といった、競争性の発揮がなされないような手法は取るべきではないと考える。

●平成25年10月18日(交通政策特別委員会)
・交通政策の共有や市民の安心の担保、職員の雇用問題などから一括譲渡すべきと指摘してきた。

●平成26年5月(交通水道委員会)
・バス事業の民営化の道筋として、段階的譲渡について、スキームの検討はどのような状況になっているのか。市民のバス事業、また市民の足を守るためしっかりと検討するべき。

なぜ民営化が必要なのか〜交通局〜平成26年8月

<公営企業として存続できない財政状況>
・バス事業の収入の根幹である運輸収入は、今後も予測される人口減少等による乗車人員の低下や、平成26年8月の敬老パス制度の見直しによる影響などにより、減収リスクが高まる一方で、大幅な伸びは期待できない状況にあり、また、民営化を見すえて資本投資や人件費を抑制してきたが限界の状態である。
・すでに500億円以上の累積欠損金を抱えるなど債務超過しており、事業体としては存続できない状態となっている。加えて、オスカードリームの和解に伴う巨額の債務が加わる状況となっている。
・民営化を前提としたコスト縮減策により、平成25年度決算の経常損益では約4億円の黒字の状況となったが、平成26年度予算では、一般会計からの補助金(約10億円)を含めても経常損益は約2億円の赤字を見込む状況にある。
・将来にわたり、持続的により良いサービスを提供していくためには、早急に経営効率やノウハウに優れた民間バス事業者に運営を委ねていく必要がある。
・なお、市民のバスサービスの持続性に対する不安に対しては、路線の維持を着実にする担保として、市の役割分担や責任を明確にする。また大阪シテイ―バス鰍ノ一定の規模を随意譲渡し、セーフテイーネットとしての機能を果たすこととしている。

(参考:公営バス事業者の民営化の流れについて)
・バス事業では、全国には1991の乗り合いバス事業者があるが、そのうち、公営が運行しているのは30社(約1,5%)である。〜平成24年度末現在、国土交通省情報)
・公営も民営化の流れがあり、
札幌市=平成16年3月31日
岐阜市=平成17年3月31日
秋田市=平成18年3月31日
明石市=平成24年3月16日
広島県呉市=平成24年3月31日
徳島県鳴門市=平成25年3月31日
など、これまでに17都市で民間バスへの移管が行われている。また、近隣の尼崎市でも移管(平成28年3月下旬)が計画されている。〜公営交通事業協会発行「公営交通事業要覧」より〜
・他都市での民営化による主なサービス向上の取り組みでは、札幌市では終発時間の延長、明石市では路線の新設や運行回数の増加、運行時間の拡大などが実施された。

なぜ、民営化しなければならないのか?橋下市長、交通局のバス事業の現状に対する認識、《現状のままではバスサービスの継続性に限界がある。持続可能なバスサービスができる仕組みにしなければならない》

バス事業の現状に対する認識について                  @『公営企業として破たん状態にある』:バス事業は一般会計からの補助などを受けながら運営を行っているが、平成23年度決算で43億円の経常赤字となっており、昭和58年度以来29年連続の赤字となっている。また、累積欠損金が638億円にのぼり、資金不足も発生するなど、公営企業として破たん状態にあり、現状のままでは必要なバス路線を維持することが困難な状況にある。
A『公営企業体の限界』:これまで経営健全化に取り組んできたが、他都市や民間バス事業者に比べてコストが高く、また民間バス事業者に比べて職員数が多い。このため、稼働率が低くなっており、依然として運営が非効率となっている。公営企業のままではサービスの持続性に限界が来ている。
B『乗車人員は大幅に減少』:過去10年間で乗車人員は約4割、運輸収入は約5割減少している。持続可能なバスサービスを提供できる仕組みの構築が急務である。
C『限界にきた財政負担』:平成23年度バス事業に対し大阪市の一般会計から23億円の補助金を支出(過去10年では326億円の補助金投入)。また地下鉄事業会計から30億円の繰入金と31億円の借入金、合わせて61億円の財政支援を受けている(平成20年度からの累計で212億円の支援を受ける)。これらの支援を受けても平成23年度では運転資金も確保できない状況にあり、早急に財務リスクの解消を図る必要がある。

バスのサービス水準の維持方策について、各党からの質問。

●公明党: 「敬老パスや障がい者割引きなどのサービスは確実に維持されるのか」

◎交通局の考え: 「公募条件により、敬老パスなど福祉的措置を適用することとする」

●自民党: 「必要なバス路線の維持はどのようにされるのか」「10億円の補助金だけで運営できるのか」

◎交通局の考え: 「新たな路線の必要性について『協議体』において、実施の可否を十分検討を行い、補助金の要否の判断が必要となれば、市全体として検討して行くものとなる」「経営の効率に優れた民間バス事業者に委ねることで、本市の財政負担は10億円未満で維持できると確信している」

●Oosakaみらい(民主党): 「協定締結の内容はどいう方針を持って締結するのか」

◎交通局の考え: 「譲渡時のサービス水準を維持・向上、『バス運行にかかる協議体』に参画、本市からの支援により必要なバスサービスの維持、本市交通政策を理解しバスサービスの確保に向けた協議や事業運営を行うこと、などを盛り込む」

バス事業の平成24年度決算見込み概要。特別損益を除く経常収支は△25億円の赤字。

平成24年度の自動車運送事業(バス事業)決算見込みの概要です。特別損益を除いた経常損益は△25億8000万円の赤字です。しかし、前年度は約△43億円の赤字でしたので、約17億円の収支改善となっています。収益全体では、特別利益46億6000万円を含めて、193億8700万円です。これに対し費用は186億500万円で、差し引き7億8200万円の黒字であります。前年度に比べて41億9600万円の収支改善となっています。これは、交通局独自の給料カットや職員数の減等による人件費の減少、および委託費などの経費の減少によるものです。
この結果、平成24年度末の累積欠損金は627億5800万円となり、資金不足比率は5,2%となっています。平成25年9月2日

平成25年度予算、大阪市自動車運送事業会計(バス事業)、はじめての単年度黒字計上へ。

平成25年度バス事業会計予算は、初めての単年度黒字を計上しました。24年度予算は当年度損益が△32億8700万円の赤字ですが、25年度予算では、8億6000万円の補助金の削減にもかかわらず、5億9700万円の黒字であります。その主な理由は民営化に向けた人件費の見直しで、平成24年度補正後の予算85億3400万円に対し、平成25年度予算は53億8400万円で、△31億5000万円の削減であります。公務員であるが故の優遇を、民間並みに見直した結果であります。バス事業民営化を視野に見直しを進めていますが、民営化を実現するためには、議会の3分の2の賛同を得なければなりません。今後議会で真摯に議論を重ねるとともに、市民の理解を得るための努力が必要であります。平成25年8月31日

バス事業をめぐる議会での主な論点です。

議会質疑「交通政策部門の再構築」
@、再構築の意義について説明いただきたい。
A、主導性を持った交通政策部門の組織が必要と考えるが、いつ、どのような部署をつくるのか。?
B、交通政策部門が譲渡先事業者と協議調整をしっかりと行える能力が必要と考える。
C、交通政策の立案は事業者と共有することが必要と考える。
D、再構築の検討状況についてお聞きしたい。
E、大都市交通制度に移行した場合、交通政策部門がきっちと鉄道・バスの政策面を仕切って、民間の鉄道・バス事業者と話し合っていくことが出来るのか懸念がある。鉄道・バスを含めた交通政策については、1つの交通政策が仕切るべきである。

交通局の答弁
@、行政施策上果たしてきた役割については、大阪市で再構築する交通政策部門が担って行く必要があると考えている。
A、25年度から本市で組織再編して交通政策を考える部門を設置する。
B、交通政策部門には、民間バス事業者と協議・調整のできる、バス事業にたけた人材が必要である。
C、将来にわたって必要なバスサービスを維持するという、大阪市の交通政策を共有し、必要なバスサービスの維持・向上が図れるよう取り組んでまいりたい。
D、他都市の事例を参考にするとともに、民営化基本方針案の内容も踏まえながら、公募や選定に関すること等、交通政策部門において必要とされる取り組みについて、具体的な検討を進めている。

議会質疑「サービス水準の維持方策」
@、敬老パスや障がい者割引などのサービスは確実に維持されるのか。
A、協定の締結の内容はどういう方針を持って締結するのか。
B、必要なバス路線の維持はどのようにされるのか。

交通局の答弁
@,公募条件により、敬老パスなど福祉的措置を適用する。
A,譲渡時のサービス水準を維持・向上、「バス運行にかかる協議体」に参画、本市からの支援により必要なバスサービスの維持、本市交通政策を理解し、バスサービスの確保に向けた協議や事業運営を行うこと、などを盛り込む。
B,「バス運行にかかる協議体」において、維持期間以降も将来にわたって、必要なバスサービスを維持・向上できるよう協議・調整する。市営バスが培ってきたバスサービスを引き継げるよう取り組むとともに、路線の運行状況をチェックし、必要なバスサービスが確保できるよう取り組んでいく。また、新たな路線の必要性についても「協議体」において、実施の可否を十分検討を行い、補助金の要否の判断が必要となれば、市全体として、検討していくことになるものと、考えている。

議会質疑「地域サービス系路線の補助金」
@、10億円の補助金だけで運営できるのか。

交通局の答弁
経営効率に優れた民間バス事業者に委ねることで、本市の財政負担は10億円未満で維持できると確信している。

議会質疑「公募手法について」
@、一括譲渡または分割譲渡について、サービス水準の維持する方策としてどう考えているのか。                          一括譲渡により路線を委ねるべきではないか。
分割の場合、どのような提案があると考えているのか。
一括・分割譲渡にされるのかわからない。考え方を民間事業者に任せるのはよくないと思う。8営業所を2つに分割するのか、細かく分割すると市民の声がきちんと反映できなくなるなど、いろいろなケースがあると思う。それを示していただきたい。
A、選定方法はどのようにするのか。
分割譲渡の場合の希望営業所が重なった場合などの調整はどうするのか。
運行事業者から提案を求めるとしているが、どのような提案があると考えているのか。

交通局の答弁
@、市民の足として持続可能なバスサービスを維持する仕組みを、民間譲渡で実現することが大義であることから、プロポーザルによるさまざまな提案を見ることが、今の交通局としての提起である。
路線・ネットワークについて、エリアごとに多様なサービス展開や事業者間の競争によるコスト低減が期待できるなど、運行事業者からさまざまな提案をいただけるものと考えている。
市民・お客様のサービスの向上に向け、競争性を担保しながら路線の譲渡先を選定し、必要なバスサービスが途切れないよう十分に調整を図る。
理論では確かに「一括」というのもあり得る。現実的な問題としてあり得ると考えている。
A、プロポーザル方式により、事業者から希望する事業規模などを提案いただき、提案された内容について、安全サービスの維持向上方策などを評価項目として設定し、評価する。
必要なバスサービスの維持については、市が助成するというスキームのもと、評価項目を総合的に勘案し、優れた事業者を選定する。
公募において、必要とする補助金額の提案などをもとめることとし、提案された内容について、審査し、評価していきたい。

議会質疑「民間バス事業者との意見交換会の場の設定について」
@、民間バス会社に路線を委ねることについて話を聞く機会はもうけられないのか。

交通局の答弁
他の市町村の取り組みはしっかり勉強し、近畿圏でもたくさん事例はあることから、適宜情報は開示してまいりたい。ただし、局の職員は公の立場で仕事してきたので、ご指摘のバス会社の考えとなると、一義的には私の経験があるので、情報は開示させていただくが、そういうルートから勉強会や研究会など至急に先生方にも入っていただけるような場を作りたいと考えている。

議会質疑「債務の処理について」
@、三セク債による償還方法や負担はどうするのか。また、三セク債で処理ができない債務はどう処理するのか。

交通局の答弁
「三セク債」の発行による資金調達を考えており、関係部局と協議していく。
現有する資産を可能な限り活用し、市民負担の極小化を図る。
「三セク債」の対象にならない大阪市の内部間の債権債務の処理について、元軌道敷の処理などと合わせて、関係部局と協議していく。
(大内けいじからの指摘:三セク債の発行についてですが、三セク債の対象期間が平成21年〜25年度となっているので、バス事業の民営化が平成26年度以降になれば、事業廃止に伴う負債の処理や退職金支払いのための資金調達が極めて困難になります。)

議会質疑「営業所等の資産の整理など」
@、資産の売却や、借用している用地などの対応はどうするのか。

交通局の答弁
バス事業の運営上、利用する用地については、事業者からの提案を考慮し、民営化にあたって最適な方法を整理して、譲渡または貸し付けを決定する。
バス事業に供さない用地等については譲渡、または貸与の対象としない。
借用している土地については、事業譲渡後もバス事業者が使用できるよう、当該用地の土地所有者と協議を行う。

議会質疑「雇用の確保等」
@、雇用の確保は重要な課題であり、譲渡先への転籍内容や課題解決に向けた考えはどうか。

交通局の答弁
公募条件として、事業譲渡先での要員確保の観点からも、再就職先の確保の協力を求める。地下鉄事業の、新規事業での活用など、様々な雇用確保策を検討し、雇用の確保を図る。
職員とその家族がいたづらに路頭に迷うことは、あってはいけないことと考えており、職員の処遇は、労働組合とお互いに責任ある立場のもと、十分な意見交換会や協議を行う。

議会質疑「グループ経営について」
@、バスサービスを維持するため、地下鉄事業を親会社とし、バス事業を子会社化する手法を考えてはどうか。
A、一体的経営をすることにより、公共交通の責務を果たすことができるのではないか。

交通局の答弁
鉄道とバスはそれぞれ自律的な経営が求められている。
公共交通ネットワークという点では、地下鉄とバスの役割分担は重要であり、連携できる仕組みが必要である。
グループ経営は「あり得る」と考えているが、「それぞれの事業体が自立した経営ができている」ことが重要である。
完全民営化を目指しており、どんぶり勘定は許されない。鉄道とバスは独立し、民間資本の活用や民間からの経営陣を招へいするなど、合理的な経営が実行されるべきである。

議会質疑「大阪運輸振興鰍フ経営基盤、組織体制の強化」
@、大阪運輸振興鰍フ経営基盤や組織刷新の強化についてどのように取り組むのか。

交通局答弁
交通局として、長年の市バス運営の中で蓄積してきたノウハウや、人材があることから、出資元として必要な支援を行っていきたい。
交通局と同様、コストカットによる見直しにより、かなり経営状況は改善されている。


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