昨日の風、強かったですね。大丈夫でしたか?あと3日体調を整えながら国公立前期に備えましょう。

以下のテーマは進化と代謝の接点の話である発展的な素材なので知っておきましょう。


設問(09岐阜大/前期)
「窒素化合物の排泄方式について硬骨魚類・爬虫類・鳥類・哺乳類の排泄物質を記せ」



(しばし考える)



「硬骨魚類 アンモニア
爬虫類・鳥類 尿酸
哺乳類 尿素」

●窒素排出物の種類と進化
 
タンパク質のアミノ酸のアミノ基(-NH2)が切断されて生じるのがアンモニウムイオン(アンモニア)で毒性があり体内に蓄えられないが、
水中にすみ速やかに体外に排出する生物はそのまま排出できる。
軟骨魚(サメ・エイ)以外の大部分の魚が属する硬骨魚と両生類幼生がそうである。

「アンモニア排出
(毒性・水溶性)
ー硬骨魚類・両生類幼生(オタマジャクシ)」

陸上化した両生類成体(カエル)では、水分節約のため、窒素性排出物を一時的に体内に貯留しなければならない。アンモニアでは毒性が強いので低毒性で水溶性の尿素に変えた。
 また、哺乳類では母体内で発生するため胎児期は母体に窒素性排出物を輸送し母の肝臓で処理してもらえばいいので、両生類と同様「尿素」を排出する。
 また軟骨魚類(サメ・エイ)は、体液浸透圧を海水の浸透圧と同じにするための浸透圧を高める素材として「尿素」を蓄え、体液浸透圧調節の努力を省くようにした。そのため「尿素」を排出する。

「尿素排出
(低毒性・水溶性)
ー両生類成体・哺乳類・軟骨魚類」

爬虫類・鳥類では、閉鎖卵(殻つき卵)の中で、初期発生が行われるため、低毒であっても尿素では羊水に入り込み胚の浸透圧を高める危険性があるので、無毒で不溶性(難溶性)の尿酸にした。
鳥の茶色い糞の周りに排出される白いものが尿酸である。ハトの糞のそばの白いものを思い浮かべれば不溶性であることはわかるでしょう。
 なお鳥類では空中で激しい運動をし、飛ぶために体をかるくするために水溶液の形で蓄積しなければならない尿素よりも有利であるという見方もできる。
 昆虫類もキチン質の硬い殻ともいえる構造を持った卵が多いので尿酸排出である。

「尿酸排出
(無毒・不溶性)
ー爬虫類・鳥類・昆虫類」

●ヒトにも尿酸は存在し、少量ならば溶ける
 上記のまとめは「その生物の窒素性排出物の「多く」は何か?」という意味であって、少量なら他の物質も存在する。
 ヒトの尿にもアンモニアや尿酸も少量あるし、またそれが腎臓で排出される前段階の血液にも存在する。
 ただし、尿酸は難溶性なので、健康状態の少量ではぎりぎり溶解しているが、過剰になると溶解できず結晶化する。
それが体の末梢血管につまると「風が吹いただけでも痛い」ぐらいに痛みが強い病気「痛風」となる。

●尿酸の原料はプリン塩基(アデニン・グアニン)
 尿酸はDNAに含まれる4種の塩基(Aアデニン・Tチミン・Gグアニン・Cシトシン)のうち、プリン塩基と総称されるAGの分解産物である。
 核酸の多い食べ物は肉の食べすぎなどであるため、
痛風は昔は「贅沢病」という側面が強かったが、多くの人が飽食の傾向となっている現代
日本では「高尿酸血症→痛風」となる場合が多い。
 核酸塩基のことはのちに説明しますが、まずは

「プリンの味(AG)にはまると痛風になる」
(本当は皆さんが想定する甘いプリンは関係ないです)

と押さえておきましょう。

●哺乳類進化とビタミンC合成酵素・尿酸酸化酵素
ネズミ類など哺乳類の初期はビタミンC合成酵素遺伝子と尿酸酸化酵素(尿酸分解酵素)遺伝子を両方持っていました。
 霊長類真猿類になる時、ビタミンC合成酵素遺伝子が欠損したため、真猿類は熱帯林の果物をできるだけ
食べて食べ物からビタミンCを接種するようになりました。
 真猿類の一部から類人猿(オランウータン・ゴリラ・チンパンジー)・ヒトが分岐した時、尿酸酸化酵素(尿酸分解酵素)遺伝子が失われたため、類人猿とヒトは「痛風」になりやすい宿命を抱え込みました。

●尿酸酸化酵素遺伝子欠損の「利点」
 尿酸には活性酸素などを除去する抗酸化物質としての特徴もあります。
ビタミンCも同様な抗酸化物質なのですが、
果物からの接種が不足した時、血液内に尿酸が存在することが「ビタミンC不足の保険・代替」として働く
ことにより活性酸素の害を防いできたといわれています。
進化にはメリットとデメリットの両面があることが多いです。

●水溶性ビタミンはB・C、脂溶性はD・A・K・E
  ビタミンは微量だが生体にかかせず、食物から摂取するものを示し、分子的な共通性でまとめられた言葉ではない。
 入試では水溶性・脂溶性の分類が知識として聞かれる。
水溶性は「ビシャ」(BC)と濡れ、脂溶性はこれ「だけ」(DAKE)とおさえる。