インフルエンザウイルスはRNAウイルスで、遺伝子は8本のRNAで構成されており、このRNAとタンパク質の複合体を、
キャプシドと脂質二重層が包み、その外側にさらにスパイクというタンパク質の突起を持っている。突起には2種類あり、
1つはヘマグルチニン(HA)という糖タンパク質のスパイクで、ウイルスが特定の細胞に侵入するために役立っている。
もう1つはノイラミニダーゼ(NA)という糖タンパク質スパイクで、こちらはウイルスが増殖し
たあと細胞から外に出るのに役立っている。
国立感染症研究所のHPで以下のように書いてあった。             
「突如として発生してまたたく間に広がり、数ヶ月のうちに消えていく、咳と高熱の流行性疾患の記録は、ヒポクラテスの時代からあったといわれている。
周期的に流行が現れてくるところから、16世紀のイタリアの占星家たちは、これを星や寒気の影響(influenza=influence)によるものと考えていた。
我が国では、平安時代の「増鏡」に『しはぶき(咳)やみはやりて人多く失せたまふ・・・』と書かれており、
江戸時代には、『お駒風』『谷風』などと名付けられた悪性のかぜ(インフルエンザ?)の流行が見られたという。」
 現在では、スペインかぜの時のようにインフルエンザで死亡する人は激減したため、我が国ではインフルエンザはかぜの1種でたいしたことはないという認識が広まってしまったが、
決してそうではない、と国立感染症研究所は警告している。

[体を守る仕組み]
 こうやって調べてみると、我々の周りには感染を起こすような病原体がたくさんいて、いつも侵入を狙っているように思えてくる。
それでもそう簡単に病気にならないのは、我々の体に防御機構が備わっているからである。
生物の授業でからだを守る仕組みを学習したが、もう一度いろいろと調べてみた。病原体の感染を防ぐための方法には、非特異的防御機構と特異的防御機構がある、と書かれていた。
 (A)「非特異的防御機構」には、病原体が体内へ侵入するのを防ぐ物理的な障壁と、これを通過して侵入してしまった病原体をつかまえる機構がある。
物理的な障壁としてもっとも重要なはたらきをしているのは上皮組織である。
体の表面を被う上皮組織は、細胞どうしが特殊な構造によってしっかりと結合していて、病原体が簡単には内部に侵入できないようになっている。
また、気管の上皮組織表面には絨毛が生え粘液が分泌されていて、これによって侵入した異物は捕促され、絨毛運動によって口の方へ押し戻されるようになっている。
 もう1つの非特異的防御機構は、白血球の1種である単球に由来するマクロファージや顆粒白血球が、侵入した異物を貪(どん)食して除去する方法である。
ヒトの体を例に取れば、外部への開口部には粘膜があり、この付近にはこれらの貪食作用を持った細胞が常駐していて監視している。

問 外界と生体の接触面には、異物が体内に侵入しないような非特異的防御機構がそなわっている。
身体ののどの部位に、異物の侵入を防ぐ非特異的防御機構がそなわっているかをできるだけ多くの部位に関して書け。


(しばし考える)


解答
「・涙・鼻水・だ液に含まれるリゾチームにより、細菌の感染を防ぐ。
・くしゃみ・咳・鼻水・涙・だ液(つば)により異物を外に出す。
・気管の繊毛上皮細胞の繊毛運動により異物を「たん」として外に出す。
・肺粘膜表面でマクロファージや顆粒球が侵入した異物を貪食する。
・胃酸の塩酸で細菌などを殺す。
・消化管粘膜表面でマクロファージや顆粒球が侵入した異物を貪食する。」

●リゾチームとは?
lysozyme。細菌の細胞壁を加水分解する酵素。卵白の中にも含まれ、卵殻からの細菌が卵細胞(卵黄)に届かないようにしている。

●ヘリコバクター・ピロリ菌とは?
 多くの細菌が殺されていく強酸性(HClが多)の胃酸でも生存でき、胃潰瘍などの原因になっている細菌。
 食物中の尿素をNH3とCO2に分解するウレアーゼを持ち、生成したNH3でHClを中和し生き延びることができる。ウレアーゼは肝臓のオルニチン回路の逆反応である。
 13Cを含む尿素を含む検査薬を飲み、呼気から13CO2が検出するかを調べる「尿素呼気試験」が有名である。