「アミノ酸」の関連問題は生物・化学共通テーマであり、ここをキチッとおさえることは一挙両得です。
 したがって、これから6回ぐらい、アミノ酸を原点から説明します。

★設問(2010年岐阜大・化学・一部改)
 次の文の(ア)〜(カ)に入れる適語を答えるとともに、アミノ酸A・Bの名称を答えよ(ABは順不同)。

一般にアミノ酸とは( ア )性の官能基であるアミノ基と( イ )性の官能基であるカルボキシ(ル)基が同じ( ウ )原子に結合しているものをαーアミノ酸という。
 生命活動に重要な役割を果たしているタンパク質は、多数のαーアミノ酸が縮合重合(縮重合)した化合物である( エ )の中でも分子量10,000以上の高分子化合物である。
天然のタンパク質を構成するαーアミノ酸は約( オ )種類が知られており、
それぞれに特有な置換基(側鎖)の構造によってアミノ酸としての性質が異なる。水溶液中では
アミノ酸は陽イオン、( カ )、および陰イオンのイオン種が平衡状態にあるが、これらの比率は溶液のpHによって変化する。
 天然のタンパク質の構成成分である
2種類のαーアミノ酸、
AとBがある。AとBを脱水縮合させてできた混合物を分離して、分子量146の化合物CとDを得た。



(考える)


ア塩基 イ酸 ウ炭素
エーポリペプチド
オ20 カ双性イオン

AB−グリシン・アラニン

解説
 下図のように、。アミノ酸の側鎖以外の骨格の部分は分子量74である。
すぐに計算できるとはいえ、時間の節約や間違い防止のため知っておくと便利です。



 









 





「アミノ酸は側鎖なし(74)で分子量74」

とおさえましょう。

CDはABを縮合重合させた化合物なので、
結合順(N末端→C末端)にABかBAで水分子1分子がとれるのは同じなので同じ分子量です。
 仮にC(AB)で考えて計算しますと

A+B→C(AB)+H20
A+B=146+18=164

A,Bともに側鎖以外の分子骨格は74で2つ合わせると148なので
AB側鎖の分子量の合計は
164-148=16

アミノ酸の中で最も簡単な側鎖は
グリシンのHで分子量1

次に簡単な側鎖は
アラニンのCH3で分子量15

するとグリシン・アラニンの側鎖分子量合計は16となり、
ABがグリシンとアラニンとわかります。
CDは「グリシンーアラニン」か「アラニンーグリシン」です。

★水溶液中でのアミノ酸の状態

 水溶液のpH(酸性・塩基性の度合い)によって水溶液中のアミノ酸の状態は異なります。

ある1種の特定のアミノ酸溶液に関して、
ほとんどのアミノ酸が双性イオンになり、ほんの一部が陽イオン・陰イオン(その両者は等量)となっている状態を「等電点」といい、アミノ酸の種類(側鎖の種類)によって異なります。
 双性イオンとはアミノ基(-NH2)・カルボキシル基(-COOH)双方が電離し、NH3+,COO-となっているイオンのことです。

等電点の双性イオン(NH3+,COO-)を基準に、pH変化を考えてみましょう。

1、 等電点より酸性の溶液(pHが小さい溶液)
では溶液中にH+が多いため、NH3+はそのままで、
COO-の部分に強制的にH+が付加され、
NH3+とCOOHを持つ「陽イオン」となります。

2、等電点より塩基性の溶液(pHが大きい溶液)
では溶液中にOH-が多く、H+が少ないため
COO-はそのままで、
NH3+からは溶液中に不足気味のH+がはぎとられ
(溶液中に多いOH-がH+をはぎ取って水H2Oに戻り)

NH2とCOO-を持つ「陰イオン」になります。
この基本認識は持っておきましょう。


(更には側鎖のRにNH3+(NH2+,NH+)かCOO-を持つ場合は変化がもう1段階増えるのですが、スペースの都合上省略します)