★本日6日(火)市谷をまとまった質問日としてご活用を
 昨日で後期の通常授業は終了ですね。お疲れ様でした。
 本日6日(火)は補講も含めて朝8時〜夜9時まで市谷校舎(講師室・ただし1〜4限は補講、あと昼食と夕食で、日高屋か富士そばに一瞬出る)にいます。まとまった質問日としてたまった質問があればぜひご活用を。

設問(08東大前期)
「土壌をガラス管につめ、上から硫酸アンモニウムの溶液を流すと、下から硫酸カルシウムの溶液が出てくる。
これは土壌中のカルシウムイオン(Ca2+)と溶液中のアンモニウムイオンとが交換することでおこる現象であり、土壌には外から入ってきた正荷電のイオンを保持する能力があることを意味する。
一方、負荷電のイオンは土壌にはほとんど保持されない。
このような土壌の特性から、硝酸カリウムを畑にまいた場合、カリウムの肥料効果は十分に得られるものの、窒素の肥料効果はそれほど得られないということがおこる。
これは、雨水が土壌に浸透し下降していく際に、カリウムイオン(K+)は土壌に保持されるのに対して、硝酸イオンは地下水系まで流されてしまうからである。
では、硫酸アンモニウムを窒素肥料としてまいた場合には何がおこるだろうか。土壌には硝化細菌と脱窒素細菌が多数生育するので、硝化作用と脱窒作用もはたらきそうである。
このことを水田を題材に考えてみよう。

(実際の入試問題は白黒の図ですが、カラーにしてみました)











 

田では、耕運により土壌表面から20cm程度の深さに水漏れを防ぐ層(鋤床層、すきどこそう)を作製し、
それより上部の土壌を水と混合して作土層とし、これを水(田面水、でんめんすい)でおおう。
これにより、作土層は空気から遮断される。そのため作土層は田面水と接する表層だけ(厚さ1cm程度)が好気的状態(酸化層)で、その下層は嫌気的状態(還元層)となっている。
作土層の水は鋤床層からゆっくりと漏れ出るため、それに応じて田面水が作土層へ浸透していく。
水田で、硫酸アンモニウムを窒素肥料として作土層の表面にまいても、その多くはイネに吸収される前に消失してしまい、十分な肥料効果は得られない。

問1 水田土壌の酸化層ならびに還元層において、硝化細菌と脱窒素細菌による硝化作用と脱窒作用はおこるのだろうか。おこる場合は○、おこらない場合を×で答えよ。
(a)酸化層における硝化細菌による硝化作用
(b)酸化層における脱窒素細菌による脱窒素作用
(c)還元層における硝化細菌による硝化作用
(d)還元層における脱窒素細菌による脱窒素作用

問2 硫酸アンモニウムを窒素肥料として作土層表面にまいても、その多くはイネに吸収される前に消失してしまい十分な肥料効果を得られないのはなぜか?

問3 硫酸アンモニウムは水田のどの部分に与えると安定してイネに吸収されることになるだろうか?


(ゆっくり考える)



解答
「問1 a○ b× c× d○
問2 NH4+は正電荷なので酸化層に保持されるが好気条件なので硝化細菌で硝化されNO3-に変換される。
負電荷のNO3-は保持されず還元層・鋤床層を経て漏出する。また還元層は嫌気条件なので脱窒菌の活動でNO3ーの一部はN2として放出される。
問3 還元層に与えると嫌気条件なので硝化細菌による硝化作用をうけずにNH4+のままである。
NH4+は脱窒菌の作用を受けずにNH4+のまま保持される。植物の根はNO3-だけでなくNH4+を吸収して利用できるので窒素肥料としての効果が持続する。

●土壌のイオン交換反応
 山の土壌は、土壌表面がーに帯電し、土壌表面にCa2+,Mg2+を保持しています。
水が流れこむと水中の+イオンと土壌表面のCa2+,Ma2+が交換され、湧水(水中)にCa2+、Ma2+が多く含まれ「おいしい水」になります。
同時に石鹸が働きにくいので「硬水」と呼ばれます。同様の陽イオン交換保持作用が水田土壌にもあり、肥料中の+イオンはよく保持されるのです。

●三大肥料はNPK
化学肥料の理論で作物に必要な肥料はNPK(窒素・リン・カリウム)で三大肥料と言われます。
「三大肥料=NPK」は入試でよく聞かれます。
ただ単純に十分量を土壌に加えればよいことことではなく、上記設問のように土壌中のイオンの動きには土壌の性質、微生物の分布など様々な要素があります。

●「硫安」
 戦後肥料として多用された硫安(硫酸アンモニウム(NH4)2SO4)は土壌中でNH4+とSO4の2-になりますが、NH4+には上記のような問題があります。
更にSO4の2-は「硫酸還元菌」の作用でH2Sを土壌に増やし、過剰なH2Sが根を傷つけ作物を枯らすことが問題となりました。