以下の上図は、血しょう・腎臓の原尿・尿中の各成分の濃度を示したものである。なお、イヌリンやパラアミノ馬尿酸(PAH、paraaminohippuric acid)は普段はヒト体内にはない。腎臓の機能検査のため、静脈注射後調べた結果である。










 








(下図は昨日勉強した腎血流の中で血球を略し、液体成分(血しょう)の動きのみを示したものである。この下図は入試問題には添付されない。受験生の側が、上図の数値を読むにあたって、この下図はいつでも試験において問題をとくために、必要に応じて「余白」に書くことできてほしいものである。)

★設問1 タンパク質とグルコースはともに尿中濃度が0となっているがその過程は異なる。その過程の違いを説明せよ。






・タンパク質は分子が大きく、糸球体の壁の穴を通過できないため、そもそも原尿にろ過されない。したがって尿にも排出されない。
・グルコースは分子が小さく、糸球体の壁の穴を通過でき、原尿中にろ過される。その後、全量が細尿管で毛細血管に再吸収されるので、尿中には排出されない。

問2 ろ過されないタンパク質を除き、ろ過される物質は、血しょう中濃度と原尿中濃度が等しい。なぜか?




答 血しょうから糸球体の壁の穴を通じてボーマンのう側に移行する「ろ過」は、受動輸送で通過するだけで濃縮は行われないので濃度は変化しない。

解説
 実際には各成分の血しょう濃度・尿中濃度を測定する「血液検査」と「尿検査」は採血・採尿するだけで簡単にできる。しかし、原尿中濃度は腎臓のボーマンのうやボーマンのうに近い細尿管から原尿を採集しなければならず困難で侵襲性(人体への害)も多い。したがって原尿中濃度は実際には測定せず、血液検査で判明した血しょう中濃度=原尿中濃度と考える。

問3 Na+と尿素の濃縮率を求めよ。



答 Na+1,1倍、尿素66,7倍

解説「濃縮率」は「尿中濃度/血しょう中(原尿中)濃度」で、どれぐらい尿のなる時濃縮されたかを示す。明日行う再吸収なども関係も考慮した計算ではなく、表のデータから即計算できる。

Na+ 0.35/0.32 =1.1倍
尿素 2/0.03 =66.7倍


問4 Na+は血しょう中濃度と尿中濃度がほぼ等しく、濃縮率はほぼ1である。なぜか?




答 溶媒である水とほぼ同じ比率で再吸収・尿へ排出されるので濃度があまり変化しない。

問5 イヌリンの濃縮率は125倍であるが、これはイヌリンのどのような性質をしめすか?




答 ろ過され原尿中に出たものが、全く再吸収されず全量尿中に排出され、追加分泌もない。(原尿→尿が体積が1/125になるのに反比例し、濃度は125倍となる。)

解説 また追加分泌もないので原尿→尿の過程だけで考えてよい。解答が字数に余裕があったり、同設問でPAHとの関係が聞かれている問題の時は「追加分泌もない」と明記したほうがよいが、イヌリンしか出題されず、字数が少ない場合は追加分泌のことは解答に言及しなくてもよい。
(もちろん書いても間違いとはならないので、字数があれば書いたほうが無難である)



問6 PAHの濃縮率は600倍となるが、それはPAHのどのような性質によるか?




答 原尿中にろ過されるとともに、血液中に残ったものも毛細血管から尿細管へ全量が追加分泌される。結果的に腎血しょう中のPAHは全量が尿中に排出される。


解説
 したがって「尿量×イヌリン濃縮率」で原尿量(糸球体ろ過量GFR)が、「尿量×PAH濃縮率」で腎血しょう流量(RPF)がわかるので、腎機能の検査に使用される。
 ただ、イヌリン検査は実際には少し面倒なので、体内に存在し、約75倍濃縮されるクレアチニン数値からある換算式で換算し、イヌリン検査に相当する推定値をだし、尿検査で判明するようにしている。
(5年ほど前から、各自治体で国民健康保険予算で執行されていることが多い)