本日は問題形式ではなく、知識を説明する形にします。
腎臓に関する計算問題は、健康人での標準的な数値で聞かれることが多い。もちろん、設問によって微妙に数値が異なるので、設問ごとに正確に数値計算する必要があるが、
標準値を知っておくと、明らかな計算ミスに気づきやすくなる。それを説明したい。(なお、疾病の人や犬などを用いたデータの場合、以下に示す数値と大きく異なることになるので注意)

 人体の血液は5L。で約1分間で体を1周する。したがって血流量は5L/分と考えてよい。なお血流の原点(出発点)である
心臓(と短い循環ループを形成している肺)には5L/分の血流が通るが、他の臓器は「並列」となるため血流は分散する。
分散するといっても、血液は重要な臓器に集中するので、「脳」「肝(と小腸)」「腎」「筋」に1L/分、他の部位に1L/分となる。(これは人体の血流の流れを理解する大ざっぱな数字なので、厳密には違う。)
 私はこのイメージのもとに、腎血流を1L(1000mL)/分として説明してきた。その数値で概要は理解できるが、新課程の教科書を丹念に確認すると、
「腎血流量1200mL/分、原料量125mL/分、尿量1mL/分」
という数値が採用されているので、その数値を基本に書いた図が以下のとおりである。








 


(以下単位はすべてmL/分)
腎動脈から入る1200の腎血流量(RBF、renal blood flow)のうち血球が45%、血しょうが55%であるが、血球はそのまま血液中にあり続ける。血しょう成分は計算上660となるが、わかりやすいように600で説明する。
腎血しょう流量(RPF、renal plasma flow)600は腎小体の糸球体・ボーマンを通過する際、糸球体の毛細血管壁にある小さな穴を追加できる物質はボーマンのう側に移動し「原尿」となる。
これを「ろ過」といい、エネルギーを必要としない受動輸送である。原尿の量は糸球体をろ過された量なので、糸球体ろ過量(GFR、glomerular filtration rate)とも言う。
 原尿には、穴より小さな分子ならば種類に関わらず出されうるが、量的にはすべての液体成分が原尿になるわけではなく、600のうち125が原尿となるが、475は血液中にとどまる。125が原尿になるため、血液に残る血しょうは475、血液全体では1075となる。
 原尿が細尿管・集合管を通過する際、毛細血管がそれを取り巻き、必要な成分をATPのエネルギーを使って能動輸送で「再吸収」する。
逆にある種の成分は、ろ過に引き続いて毛細血管中から細尿管中にここでも廃棄されることもありこれを「追加分泌」という。
 入試問題の8割では、追加分泌を無視し「ろ過」「再吸収」の2段階のみを聞いてくるが、2割程度は「追加分泌」の存在を聞いてくる問題があるので知っておいてほしい。
再吸収は124されるので、尿への排出は1となる。結果として尿にならず腎静脈にいたるものは1199となる。