★設問1 クルマエビについて背腹に沿った断面を見た場合、
中枢神経(クルマエビの場合ははしご状神経)・心臓・消化管は、背から腹にどの順番で並ぶが?
またアジの場合はどうか?(アジの場合は中枢神経は脊髄である。)アジの場合は脊椎骨も加えて書け。



(考える)




解説
 アジはヒトと同じ脊椎動物であり、皆さんの体と同じだと考えればよい。クルマエビは逆となります。
 料理でアジの内臓は「はらわた」として取り除きますが、クルマエビの内臓は殻をむいて「背わた」として取り除くことからも、
クルマエビでは神経が腹側、消化管が背側にあることがわかる。






★設問2 カエルの初期発生では、腹側で主に発現するBMP(のうちBMP受容体に結合できるもの)と、
背側だけに発現するコーディン(chordin、略称chd)というタンパク質の局在が見られる。
 一方、ショウジョウバエの初期発生では腹側でショートガスツルレーション(short gastrulation,略称sog)、
背側でデカペンタプレジック(decopentaplegic、略称dpp)が局在してみられる。
 のちに、カエル腹側に多いBMPを作るBMP遺伝子とショウジョウバエ背側に多く発現するdppは相同遺伝子、
またカエル背側に多く発現するchdと、ショウジョウバエ腹側に多く発現するsogは相同遺伝子であることがわかった。
このことは何を意味するか?進化的な意味を含めて答えよ。



(考える)




背腹方向を決める遺伝子の原型は、
カエル(新口動物)とショウジョウバエ(旧口動物)で相同であることから、両者が分岐する以前の共通祖先から獲得されていた。
 しかし、それは見掛け上の背腹ではなく、その軸の中で中枢神経の分化を誘導する遺伝子(chd、sog)と
消化管の分化を誘導する遺伝子(BMP、dpp)として局在して発現し、新口動物と旧口動物では、この遺伝子の背腹の位置が逆転しているため、中枢神経・消化管の配置が逆転している。

解説
 設計図は同じだが、設計図の配列の順番が違うようなもの。


★カエルの背腹軸
 全細胞が普遍的に分泌する物質BMPとそれを受け止めるBMPレセプターがある。BMPがBMPレセプターに結合すると腹側細胞となる。背側では分泌されるChordinなどの物質がBMPに結合するため、BMPのBMPレセプターへの結合が妨げられ、「腹側化」が阻止され、背側となる。

★追加解説(これは難問ですが、素材的には出されてもおかしくない内容です)

ショウジョウバエの背腹軸が決まる母性因子からの流れを確認します。
背側の細胞も、腹側の細胞も、
細胞膜にはトールという受容体があり、細胞質のカクタスという物質に捕まえられたドーサルという物質があります。


ーーー核膜

細胞質

●(ドーサル)
■(カクタス)


ーΛーー細胞膜
 ↑
トール(受容体)


母性因子であるシュペッツレ(記号を▲で示します)
はトールに結合できる能力がある細胞外物質ですが、これは腹側のみにあります。
シュペッツレがあると、これがトールに結合し、するとトールからの指令でカクタスが分解し、
ドーサルが自由に動くようになり、これが核内に移動し、核内で腹側を作る遺伝子が発現します。


 ●(腹側形成遺伝子発現)
 ↑
ーーー核膜
 ↑
 ↑
 ↑
 ●(自由になったドーサル)
 ×(カクタス分解)
 ↑
 ↑
ーΛーー細胞膜
 ▲←シュペッツレ




 背側では母性因子シュペッツレがないため、これがおこらず、腹側遺伝子が働かないため、背側になります。