★設問1
「次のホルモン(ホルモン群)をホルモン受容体が細胞膜にあるものと、細胞内(核内)にあるものに分類せよ
・ペプチド(タンパク質)系ホルモン
・ステロイドホルモン
・チロキシン
・アドレナリン」


(考える)






解答
・細胞膜に受容体ーペプチド系ホルモン・アドレナリン
・細胞内(核内)に受容体ーステロイドホルモン・チロキシン

●解説
 ペプチド(タンパク質)系ホルモンは側鎖に水酸基・アミノ基・カルボキシル基などを持ち分子全体としては電離し水溶性のものが多い。
したがってリン脂質を主成分とする細胞膜を通過できないため、その受容体(レセプター)は細胞膜にある。
(なおこの受容体タイプは更にGタンパク共役型と酵素共役型の2タイプに分類される。)
 ステロイド系ホルモンは脂溶性で細胞膜(核膜)をすり抜けるため、そのレセプターは細胞内(核内)にある。

 メルマガ268にあるように、アドレナリンは水溶性が強く、ペプチド系ホルモンと同じく細胞膜にレセプターがある。
 チロキシンは脂溶性が強いので、ステロイド系ホルモンと同様、核内や細胞質内にレセプターがある。


●設問2 2009年信州大問題空欄補充問題より
「からだをめぐるチロキシンは脂溶性のため、細胞膜を容易に通り抜け、(1)の中にある(2)に結合し、その複合体が標的遺伝子の(3)に結合し遺伝子発現を調節する」



(考える)






解答
(1)細胞(細胞質・核)(2)受容体(レセプター)
(3)転写調節領域


設問3
「オタマジャクシを育てている水槽中にチロキシンを投与すると変態するか?ヒトが成長ホルモンを飲むと、血糖上昇などの作用をもたらすか?」



(考える)






解答
「オタマジャクシ水槽へのチロキシン投与では、チロキシンは消化管や皮膚・えら細胞の細胞膜を通過して体内に作用し変態をする。
しかしヒトが成長ホルモンを飲んでも、消化管の細胞膜を通過できるバラバラのアミノ酸まで分解されてから吸収するため血糖上昇などの効果はない。
ヒトのペプチド系ホルモン剤は、「飲み薬」では無効で注射しなければならない」


●設問4(2008年東北大後期)
「ステロイドホルモンはペプチドホルモンとは異なる様式で細胞に作用することが知られている。ステロイドホルモンとペプチドホルモンとの作用の違いについて記せ」


(考える)





解答例(設問1と同じであるが、実際に入試問題で再確認)

「ペプチドホルモンは細胞膜にある受容体にうけとめられ、
受容体の細胞内部分からシグナル伝達が起き、
その最終産物の転写因子が核内DNAの遺伝子の転写調節領域に結合して働く。
 ステロイドホルモンは脂溶性で細胞膜や核膜を透過し、
細胞質内・核内にある受容体に結合しそれが核内DNAの遺伝子の転写調節領域に結合して働く。


今日の内容を図に示すと以下のようになる。



(ちょっと書き間違いでチロキシンとアドレナリンのNH2とNHが逆になってしまっていますが、書き直すのはそれなりに大変なので、あまり入試的には重要な違いではないので、無視してください。ご容赦ください)

親水性を示す基を赤で表記した(ペプチドの場合は分子の外側に親水基がでているイメージ)と考えてみると、分子の性質の2区分がよくわかると思います。

細胞内での動きはまたもう少し詳しく説明します