★設問 ニワトリ胚の体側にできる翼芽(翼の原基)は発達して翼となるが、翼には正常型のほかに二つの突然変異型がある。
 その一つは翼芽が異常に発達する多指型で、他の一つは翼芽がほとんど発達しない無翼型である。
下図に示すように、翼芽の外胚葉には頂堤域(頂堤(ちょうてい)ができる範囲)があり、中胚葉の働きで頂堤になる。


このとき、多指型の中胚葉は広い頂堤域を保持し、大きい頂堤ができる。
これに対して、正常型の中胚葉は狭い頂堤域を保持し、小さい頂堤ができる。
 こうしてできた頂堤は中胚葉の翼への分化を誘導し、多指型、あるいは正常型の翼ができる。
 なお、無翼型の翼芽の外胚葉は頂堤になる能力を欠いている。

 頂堤ができる少し前に、正常型の翼芽の先端外胚葉を切り取り、それを正常型の他の胚の翼芽の先端外胚葉を除いたところに移植すると、正常な翼になる。
 このような移植実験を正常型の胚と突然変異型の胚との間で行い、翼芽の先端外胚葉と中胚葉とを上表のような組み合わせて発生させると、
ABCには「正常型」「多指型」「無翼型」のどれが生じるか。
(1989年・共通一次過去問)



(考える)




A正常型 B無翼型 C多指型

解説の前提
 センター試験は公式に「過去問の再使用OK」ということとした。た。現に20年以上に及ぶセンター試験(本試験・追試験)の蓄積は膨大で、再利用したくなる気持ちもわかる。
更に21年以上前、更にはセンター試験の前身の「共通一次試験」までさかのぼると、更に膨大な良門の蓄積がある。
 赤本では「過去20年」が出版されていて、受験生も対策可能であるが、逆にいうと出版されていない「21年以上前の問題」は、出題者にとっては狙い目といえる。
 

解説
ポイントは

「頂堤は中胚葉の翼への分化を誘導し、多指型、あるいは正常型の翼ができる。
 なお、無翼型の翼芽の外胚葉は頂堤になる能力を欠いている。」

という本文の記述である。

 頂堤という「キャップ」があると、「キャップ」の保護のもと、中胚葉は翼になるが、どの翼になるかは中胚葉の性質による。

外胚葉由来の「頂堤」は中胚葉が伸びることを「承認」する。
広い頂堤も狭い頂堤も「承認」するのは同じである。
頂堤は中胚葉の翼への分化を誘導し、多指型、あるいは正常型の翼ができる。
 なお、無翼型の翼芽の外胚葉は頂堤になる能力を欠いている。
が、「承認」された中胚葉が何に分化するかは中胚葉自身が決める。
  ただし「頂堤」の承認がないと中胚葉は伸びることができないので、中胚葉が何だろうと無条件で「無翼型」になる。

このように翼の種類を正常型か多指型になるかの主導権は中胚葉自身にあるが、
外胚葉も中胚葉の伸長を承認・拒否する能力があり、昨日述べたように、一般論でいう「外胚葉は中胚葉によって一方的に決められる」だけでなく、
「外胚葉が中胚葉に影響を及ぼす」こともある。だからこそ
「中胚葉と外胚葉の相互作用」という。

教師・生徒関係も同じです。勉強・学問内容は生徒は教師によって教えられることが多いが、生徒の質問・反応も教師の教授法・人生に影響を及ぼしています。
 「人生、われ以外皆わが師なり」という言葉通りです。