肝細胞はさまざまな化学反応を行う化学工場のような働きをしている酵素の宝庫です。

肝臓には、心臓から送られてくる酸素が豊富な肝動脈と、小腸から消化吸収したばかりの栄養分を多く含んだ門脈という2つの血液が流れ込みます。一方、でていく血管は1つ(肝静脈)、別の出口が1つ(胆管)です。肝臓は大きさ1mm四方ほどの基礎単位である肝小葉の集合体であり、肝細胞全体で2500億個(基礎単位の肝小葉50万個×肝小葉あたりの細胞数50万個)です。肝小葉においても門脈由来の小葉間静脈、肝動脈由来の小葉間動脈が流れこんでいること、中心静脈が肝静脈・小葉間胆管が胆管につながっていくことを確認してください。肝小葉の中は細胞が一列に並んだすぐ脇を毛細血管が流れ、毛細血管とすべての肝細胞が接触するようにしており、門脈から栄養分を吸収して化学反応をしやすい構造となっています。

肝臓の機能
@過剰なグルコース・アミノ酸・脂質をグリコーゲン・タンパク質・脂質に蓄え、必要なときに供給する
A代謝過程において発熱する(全熱量の22%)
B解毒作用。アルコールの解毒もする
Cオルニチン回路を介して尿素を合成する
D古くなった赤血球を破壊する

●ウンチはなぜ茶色なのか?〜胆汁の話
便(ウンチ)の色は、十二指腸に分泌される胆汁の色です。胆汁は胆のうでつくられるのではありません。肝臓でつくられ、胆のうで濃縮されて分泌されます。胆のうでは貯蔵・濃縮しているだけなので注意してください。
胆汁は、胆汁酸、コレステロール、ビリルビンなどの混合物です。ビリルビンは、肝臓が古くなった赤血球のヘモグロビンを分解した産物で茶色の色素です。ビリルビンの一部は腸内細菌でウロビリノーゲンに変化し、便の茶色になります。ウロビリノーゲンの一部は腸から吸収され肝臓で再利用されて胆汁の成分になります(腸肝循環)が、それ以外は血液を経て腎臓から尿の色を黄色にします。尿の黄色も便の茶色も赤い血から出発した兄弟なのです。
胆汁は消化液ではありません。脂肪消化の手助けをする乳化に働きます。脂肪を直接脂肪酸とグリセリンに加水分解する酵素はすい臓・腸から分泌されるリパーゼが働きやすいように脂肪の大きな塊を細かく砕くのが乳化です。

●尿素合成は肝臓・尿素排出は腎臓
 体内でタンパク質などが分解されるとアンモニアができます。アンモニアは有毒なので肝臓で二酸化炭素と結合させて低毒の尿素に変換します。尿素自体はアンモニア2つを二酸化炭素でつなぎ合わせたような分子です。この過程を尿素回路(オルニチン回路)といい、回路を回すためにはATPのエネルギーが必要です。合成された尿素は腎臓で濃縮されて排出されます。尿素は「合成=肝臓、排出=腎臓」であることに注意してください。