小腸の血液に吸収された栄養分は、肝臓へ肝門脈を通じて運ばれていきます。したがって消化管と肝臓は直列につながっています。そこで、まずは消化管についてみていきましょう。
消化とは、栄養分として取り込んだ大型分子を加水分解することです。そのとき、物質の種類や大きさに合わせた消化酵素(加水分解酵素)が唾液・胃液・膵液・腸液に含まれて分泌され、加水分解を促進します。加水分解で生じた小型分子(グルコースなど糖・アミノ酸・脂肪酸など)を小腸から吸収します。消化管はまるで電車(列車)に荷物を積む貨物ヤードのような場所です。

三大呼吸基質と分解図

胃液からは胃酸(塩酸・HCl)が分泌されます。これは外部から侵入してきた細菌を殺すためと考えられています。胃液内の消化酵素(ぺプシン)は強い酸性条件下ではたらく性質をもっています。
次の十二指腸では胃酸を中和するために弱アルカリ性の炭酸水素ナトリウムが膵臓から分泌されます。膵液中の消化酵素もその弱アルカリ性ではたらきやすい性質をもっています。

胃酸で胃が消化されないわけ
胃液はタンパク質分解酵素のペプシンを分泌します。また強酸性の塩酸も分泌されます。胃粘膜を構成する細胞も、主成分はタンパク質なので傷つく危険があります。そこで胃ではムチンという粘液物質を分泌して胃粘膜を保護するとともに、消化酵素分泌の際も、不活性のペプシノゲンで分泌し、それが胃内で塩酸によって活性型のぺプシンになるようにしています。膵液からのトリプシンも同様で、まずはトリプシノゲンとして分泌されます。

Memo腸内共生細菌
60兆個の細胞でできているあなたの腸内には、その数を超える100兆個の腸内共生細菌がいます。ほとんどが原核生物ですので、総重量は1kgほどですが、それにしても体重の中の1kgが細菌というのはすごいですね。
腸内共生細菌は、ヒトの摂取した栄養の一部を摂取していますが、一方で、病原菌などの増殖を抑えるなど免疫系にも働くとともに、腸内の消化酵素で分解・吸収されなかった物質をひとが吸収しやすい形に変化させる手助けもしています。胎児のときは無菌状態ですので、腸内細菌は赤ちゃんが生まれた後に口から入ってきます。そしてずっと生体と共生しているのですが、その種類の比率は健康状態・加齢で変化すので、腸内細菌比率をみると健康・加齢状態がわかります。