全身の静脈から集められた血液は、右心室から肺に送られます。この肺は血液中の二酸化炭素を捨て、かわりに酸素を赤血球に積み込む場所となります。肺では、1分間に500mLのガス交換が15回行われるので、あなたは毎分7.5ℓの空気を出し入れしているのです。
肺は左右に1つずつあり、小さな部屋である肺胞が両方で6億個存在し、その総表面積は60m2にもなります。
 酸素は赤血球が運びます。赤血球中にはヘモグロビンという色素タンパク質があり、これは鉄原子を含んでいます。この鉄原子の部分に酸素を結合して運びます。その結合箇所は1つのヘモグロビンに4箇所あり、酸素濃度の差によって1から4分子まで段階的な運搬が可能です。鉄に酸素が結合するのは、基本的には鉄サビと同じ原理であり、赤血球が赤くみえるのはこのためです。
肺など酸素が多いところではヘモグロビンは酸素を結合し、組織末端で酸素が少ないところでは逆に離します。これは普通の濃度差による拡散ですが、その仲立ちを血液循環がしているのです。
 
●酸素解離曲線
さて、肺での酸素積み込みと末端組織への供給には絶妙なしくみがあります。実はヘモグロビン(Hb)に結合するのは酸素だけではありません。二酸化炭素も結合しますし、一酸化炭素も結合します。
もっとも恐ろしいのは一酸化炭素で、その結合力は酸素の200倍もあり、微量でもヘモグロビンを独占してしまいます。一酸化炭素が0.1%になるだけでヘモグロビンが一酸化炭素に独占されて酸素が運べないため、死に至ります(内部窒息といいます)。
さて一酸化炭素ほどではありませんが、二酸化炭素も酸素とヘモグロビンを奪いあうライバルです。実はこのライバル関係があるために、二酸化炭素の少ない肺ではヘモグロビンは多くの酸素を積み、細胞の呼吸活動の結果、二酸化炭素の増えている末端組織では競合するCO2(ライバル)が多いため、O2はヘモグロビンから切り離され、多くの酸素を末端組織に供給してくれることになります。

さて、二酸化炭素が多いと酸素にとってはヘモグロビンを奪うライバルが多いことになりヘモグロビンを独占できず結合%は下がり、グラフが下(右)になります。肺では条件で酸素を結合したヘモグロビンがもし、末端組織で二酸化炭素の増加がなければその結合率はまだ高く、組織におろす酸素は少なくなります。実際は組織で二酸化炭素が増えるため、グラフは下のグラフとなりずっと多い酸素を組織におろすことができるのです。