●血液凝固と線溶
 ケガをしたときに大量の出血を防ぐため、体には血液を凝固させるしくみがあります。気づかないような微細な内出血でも凝固が行われています。出血時には、まず傷口を血小板が物理的に防ごうとします。次に血しょう内にあるプロトロンビンがCa2+と血液凝固因子の働きでトロンビンとなり、そのトロンビンがフィブリノーゲン(線維素原)をフィブリン(線維素)にします。フィブリンに血球がからみつき、血栓(血ぺい)になり、それが傷口をふさぎます。
外出血のときにできたかさぶたは、物理的にはがれることもありますが、内出血の場合はそうもいきません。そこで過剰につくってしまった血栓は血流のじゃまになるので、今度はフィブリンを溶かして分解する必要があります。まず、前駆体からプラスミノーゲンアクチベーターが合成され、それがプラスノゲンをプラスミンに変えます。プラスミンはフィブリンを溶解します。これを線維素溶解(線溶)といいます。人体は気づかなくても内出血をくり返しています。凝固・線溶系はバランスをとって制御しています。

●血液凝固防止・血栓溶解療法
 手術・治療時には、血液凝固を防いだり血栓を溶解したりする必要があります。そのときは、下記の方法があります。
@ クエン酸ナトリウムを添加してカルシウムをクエン酸に結合させて除去する(輸血用血液や採血時にはクエン酸ナトリウム添加をします)。
A トロンビンは酵素なので低温にするとその働きを抑えられます(採血した血液を貯蔵・輸送する際、低温パックにするのはこのためです)。
B ヘパリン(肝臓=ギリシャ語でhepa-で合成)ヒルジン(血液凝固を防ぎながら吸血するヒルの唾液線の物質)ヒルから抽出された)添加でトロンビンの働きを抑えます。医療用輸液などにヘパリンのルートを患者の輸液注入部(注射針の先)での凝固を防止することを「ヘパリンロック(凝固をロック=防ぐ)といいます。
C ガラス棒でかきまぜ除去することもできます。
D 急性心筋梗塞など血栓の除去の初期治療にtPA(tissue plasminogen activator)を使うことがあります。これを血栓溶解療法といいます。

血しょうからフィブリノーゲンなどを除いてしまったのが血清
最初に凝固させてしまうことで、フィブリノーゲンなど凝固にかかわる成分を取り除いたのが血清です。