●神経の興奮が筋肉に伝えられたとき、どのように筋肉が収縮するかを考えてみましょう。

筋細胞内のCa2+が出発
神経筋接合部の軸索末端(神経終末)からアセチルコリンなど神経伝達物質が放出されると、それは筋細胞表面のレセプターに受け止められ、筋細胞膜に活動電位を発生させます。骨格筋は、胎児期は1つの細胞に1つの核がある細胞でしたが、収縮の目的のために細胞が融合して長くなったため、1つの長い細胞の中に核が多数ある多核細胞となっています。所々にT管のくびれ込みがあり、その両側に筋小胞体があります。筋細胞膜の活動電位がT管に入ると、そのT管と筋細胞に筋小胞体をつなぐ膜電位センサーが感受し、そこから筋小胞体に蓄えられていたCa2+が放出されます。

●骨格筋細胞の構造
 骨格筋は多数の筋細胞の束で、筋細胞はさらに筋原線維という細い線維の束ででてきています。筋原線維を顕微鏡で見ると暗い部分と明るい部分が交互になった横しま模様のくり返しがあるので、横紋筋とよばれます。横しま模様のくり返しの内部構造をみると、次のようになっています。太いミオシンフィラメントがある部分は暗くなっているので暗帯とよび、それ以外は細いアクチンフィラメントしかないので明帯といいます。明帯の中央にはZ膜というしきりがあり、Z膜からZ膜までの間を筋節salcomereといいます。






●骨格筋収縮のしくみ 
 神経の興奮が伝達物質・筋細胞膜活動電位・筋小胞体Ca2+放出と伝えられると、Ca2+がアクチンフィラメントとミオシンフィラメントの結合を妨げていたトロポニンに結合します。それによってミオシンフィラメントとアクチンフィラメントが接触できるようになり、ミオシン頭部のATP分解酵素の力でATPを分解し、そのエネルギーでアクチンフィラメントをたぐりよせて収縮します。アクチン・ミオシンともに重なりあうだけでそれぞれの長さは変わらないので、明帯のみが短くなることに注意してください。
(Ca2+が筋小胞体に回収されると、収縮を終えて弛緩することになります)

●骨格筋のほかには心筋細胞も横紋がみえる横紋筋ですが、単核で枝別れしており、これが強い収縮力に関与していると考えられています。
 内臓筋・血管を収縮させる血管平滑筋・毛を逆立出せる立毛筋などはアクチン・ミオシンの配列が骨格筋ほど整然としていないので横しまが見られず平滑筋といいますが、内部でおこるしくみがアクチン・ミオシンの滑りである点は同様です。一般的に横紋筋は瞬時の大きな収縮の能力が高く、平滑筋は持続的でゆるやかな収縮に関与しています。