あなたの体をつくる60兆個の細胞群の司令部として働いているのは脳など神経系ですね。そのことを考えるために、今、この本を読んでいるあなたの体で考えでみましょう。
まず文字の情報は、眼の網膜という感覚器(受容体)に入ると網膜にある視細胞を興奮させます。この興奮が網膜から大脳cerebrumまで伸びている視神経で大脳に伝えられ、字がみえたと感じるのです。
次に、あなたは本の内容を理解や記憶しようと考えますね。考える際には、大脳内の神経細胞どうしで情報のやり取りをします。また本の重みや手触りを感じるのは、皮膚の感覚点という感覚器(受容体)からの情報が、手の神経(感覚を受け取るので感覚神経といいます)から、脊髄、大脳へと伝えられるからです。
最後に、このページを読み終わったあなたはボタンをクリックして別のページに飛びます。をめくります。これは大脳の神経細胞が「ページをめくれ」という指令をだし、それが、脊髄から手の神経(運動を指令するので運動神経といいます)へと活動電流を伝え、その指令で筋肉(作動体)が動くのです。

●情報は左右逆
右手の親指を動かしてみてください。その指令は実はあなたの左脳がだしたものであり、その感覚も左脳で受け止められます。右半身の神経は脊髄などでクロスして左脳とつながり、左半身の神経は右脳とつながっています。脳障害の場合、その障害側と反対側の半身に障害がでます。

●大脳の機能局在
 大脳は、前頭葉・頭頂葉・側頂葉・後頭葉の4部位に区分され、感覚の認識・運動の指令などを場所によって役割分担し、その場所を「中枢」「野」といいます。視覚野は後頭葉、聴覚野は側頭葉というように、つながっている体の場所と脳を対角線で結んだ位置に中枢はあることが多いと考えればわかりやすいですね。(体の前面から刺激がくることが多い)体性(皮膚)感覚野→頭頂葉、(背側につく筋肉を動かす)運動→前頭葉の最上部です。記憶は聴覚野に近く、奥にある海馬という場所とつながっています。判断など知的活動は前頭葉です。面白いのは言語野で、聴くための感覚性言語野(ウエルニッケ野)は側頭葉に、話すための運動性言語野(ブローカ野)は前頭葉にあります。





●バランスの脳、「小脳」 
小脳cerebellumはバランス保持に働いています。したがって小脳が損傷するとバランスよく歩くことが難しくなります。このバランスは「倒れない」という狭い意味だけではありません。たとえば、あなたがページをめくろうとしたとき、その意志は大脳がもちますが、具体的に右手の指を何度動かし、どのぐらいの力で紙をめくるかなどは、あなたが大脳で角度・力を計算しなくても、経験から小脳が記憶し、ほとんど普段は意識しなくても行動できるレベルまで到達しています。