はよう。いよいよ前期試験の発表が始まりますね。よい結果が出ることを祈念しています。大学が決まりましたら、
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↓細胞の分裂回数とテロメア長のグラフ







 




 







 (グラフは昨日と同じですが、設問・説明は異なりますのでお読みください)


●04理科大

マウスやラットなどのげっ歯類の体細胞は、長く培養するだけで自然に不死化することが多い。
一方、ヒト体細胞は、極めて不死化されにくい。この理由として、げっ歯類の体細胞は、ヒト体細胞と異なり、テロメラーゼ活性を持っているためにM2期を克服していることがあげられる。
したがって、げっ歯類の体細胞はM1期のみを乗り越えられれば不死化される。
M1期での細胞分裂の停止には、2つの遺伝子AとBが関与しており、
SV40ウイルスのT抗原はこれら2つの遺伝子の働きを抑えて細胞の分裂寿命を延長することが知られている。
げっ歯類の体細胞が不死化するためには、同一細胞内で遺伝子AとBの両方に劣性変異(対立遺伝子の両方の変異で、異常があらわれる)が生じることが必要であると推定されている。
また同一細胞内で遺伝子AとBの劣性変異に加えて、原がん遺伝子Cに変異が生じて活性化されると、がん化された細胞が出現する。
なお、原がん遺伝子は優性形質(対立遺伝子のどちらか一方の変異で、異常があらわれる)を示すことが知られている。

正常な遺伝子をもつマウス体細胞は、
1回の細胞分裂あたり1つの遺伝子(対立遺伝子のどちらか一方)に1%の割合で変異が生じると仮定すると、
1×10の12乗のマウス正常細胞が1回分裂したとき、不死化およびがん化された細胞の出現頻度と細胞数はどれくらいになるか。

問 以下の数値を求めよ。答えは●×▲の■乗(メルマガで小さな数字表記ができないので苦肉の表記)のように表記せよ。
 
1、不死化した細胞の出現頻度

2、不死化細胞数

3、がん化細胞の細胞の出現頻度

4、がん化細胞の数




(考える)


解答
1、不死化した細胞の出現頻度
   1×10のー8乗

2、不死化細胞数
   2×10の4乗

3、がん化細胞の細胞の出現頻度
   2×10のー10乗

4、がん化細胞数
   4×10の2乗



●一般的解説〜がん化の基本理論
「がん抑制遺伝子両方変異とがん原遺伝子変異、計3変異でがん化が始まる」

設問を解く前に、がん化の一般理論を解説します。
両親から受け継いだがん抑制遺伝子(M)が両方、突然変異型(m・がん抑制の機能停止)になり、
両親から受け継いだがん原遺伝子(N)のうち片方が変異型(n)になるとがん化が始まります。

変異の順序はいろいろあるのですが一例で書くと

MMNN

MmNN

mmNN

mmNn(がん化)

3回変異でがん化

●がん家系(家族性がん)の場合
 がんが発症しやすいがん家系の場合にはいろいろなタイプがありますが、上の一般論に合わせて、一般論で説明します。
一方の親から変異型のがん抑制遺伝子を受け継ぐので

MmNN

mmNN

mmNn

2回変異でがん化するので、他の家系より若年性高頻度にがん化する可能性がある。

●本設問では
 不死化させる遺伝子ががん抑制遺伝子に相当し、それが2組(AABB)、がん原遺伝子が1組(CC)あるわけです。

そこで変異の順序の一例を示すと

AABBCC

↓10の−2乗(1%)

AaBBCC

↓10の−2乗(1%)

aaBBCC

↓10の−2乗(1%)

aaBbCC

↓10の−2乗(1%)

aabbCC(不死化)
 〜ここまでの頻度は10のー8乗〜

↓10のー2乗の2倍(2%)

aabbCc(がん化)
(CC→CcでもcCでもいいのでそれぞれが1%なので約2%です。)
 〜ここまでの頻度は2×10のー10乗〜

更に1×10の12乗が1回分裂した時点で2×10の12乗となるので、
それに頻度をかけたものが不死化細胞数・がん化細胞数となります。

不死化細胞数
「2×10の12乗」×「10の−8乗」=2×10の4乗

がん化細胞数
「2×10の12乗」×「2×10のー10乗」=4×10の2乗