グルタチオンに関し、前回の続きです。
グルタチオンは、生体内で抗酸化作用・解毒作用に関与していて生物学的に重要です。
 前回発信したように、単純な3アミノ酸の結合という簡単な構造でありながら、「グルタミン酸側鎖のCOOHがペプチド結合に関与する」という「変化球」的な話もあり、
「化学」の素材としても出題されます。
把握している代表的なものだけでも
03千葉大化学・11山形大生物・13日本医大化学
と頻出です。問題ではなく、解説とします。


★グルタチオンは通常のタンパク質分解酵素(プロテアーゼ)で破壊されにくい。
 グルタミン酸側鎖のCOOHがペプチド結合を構成するというと特殊性があるため、
グルタチオンは通常のタンパク質分解酵素で破壊されにくく安定です。(グルタチオンを分解する独自の酵素はあります)

★グルタチオン(glutathione)抱合(解毒)

 グルタチオンの反応性の多くは、システイン側鎖のSH基(チオール・thiol基)によるものです。
その反応性の1つはこの部分に毒性物質を結合させ、その状態のまま腎臓を通して排出させることです。
これを「グルタチオン抱合」といいます。抱合(conjugation)とは毒物などを結合して排出させることで、抱きかかえて外に出すというイメージの言葉ですね。

★抗酸化作用
 細胞が活発に活動するに伴い、mitochondriaを中心に酸素を使ってエネルギーを作った時に発生する活性酸素種が様々な物質や構造を壊す危険性があります。
これを「酸化ストレス」といいます。その酸化ストレスに対抗するため、生体内には様々な還元物質(抗酸化物質)があり、その1つがグルタチオンです。
とくにシステイン側鎖のSHにその還元作用があり、下の反応式のように、2分子のグルタチオンが結合し、グルタチオン2分子がSSで架橋された構造(GSSG・酸化型)ができるときに、2Hが放出され、これが抗酸化作用に利用されます。



 
 GSSH(酸化型)は直ちに細胞内のグルタチオン還元酵素でグルタチオン(還元型)に戻されるので、
細胞内では還元型グルタチオンのほうが多く、グルタチオンといえば普通還元型を示します。
 ただ還元型グルタチオンと酸化型グルタチオンを区別するときには
本体部分をGで示し、システイン側鎖のSH部分をそれにつけて表現し、
還元型GSH
酸化型GSSG
と表現します。

化学式で書くと
2GSH→GSSG+2H
GSSG+2H→2GSH

ということですね。

★還元型・酸化型の比で健康状態がわかる。
  細胞内は、通常は上記のようなしくみで還元型グルタチオンが酸化型よりも多い状態のある比で
存在していますが、酸化型は増えすぎていた場合、なんらかの異常があることになります。したがってこの比が健康指標の1つとなります。
 なんらかの理由で還元型グルタチオン比、
あるいはグルタチオンの絶対量が少なくなった場合、抗酸化作用が弱くなり、がんなど様々な疾患にかかりやすくなります。