クリスマスですね。来年のクリスマスはゆっくりと楽しめるよう、今年はがんばりましょう。

★設問1 (B細胞が生成する)抗体は何という名称のタンパク質か?



(考える)



免疫グロブリン(immunoglobulin、略称Ig)
(γ(ガンマ)グロブリン)

解説
 グロブリンというタンパク質の中にはα(アルファ)・β(ベータ
グロブリンのように抗体ではないタンパク質もあるため、免疫グロブリン(γ(ガンマ)グロブリン)と特定したほうがよい。略称をIgというのも知っておきたい。

★設問2 図はB細胞が生成する抗体の構造である。




 


a、色つき線の部分(VDJVJと書かれたアの側)と黒線の部分をそれぞれ何と呼ぶか?
b,抗原と結合する部分はアとウのどちらか?
c,イで示した細線構造は何というか?
d,エ鎖・オ鎖は鎖の名称である。エ・オに当てはまる言葉をかけ




(考える)



aー色つき線の部分ー可変部、黒線部分ー不変部
bー抗原と結合するのはア(可変部)
cーSS結合(ジスルフィド結合)
dーエ鎖ーL鎖(軽鎖) オ鎖ーH鎖(重鎖)

解説
 抗体は4つのポリペプチドがSS結合(細線)で橋渡しされて結合した構造をしている。SS結合の個数は、L鎖間が1か所ずつ、H鎖間が2か所で計4か所である。
 長い鎖をH鎖(Heavy chain、重鎖)、短い鎖をL鎖(Light chain、軽鎖)という。
 それぞれのB細胞が作る抗体は、
1つの抗原にだけ結合する特異性を持つ。その特異性の立体構造を形づくるのは、
色つきの部分の可変部のアミノ酸配列の違いである。B細胞それぞれに異なる
アミノ酸配列・立体構造を作る部分なので「可変部」(Fabともいう)という。抗原結合部位はアであり、
1つの抗体あたり2か所ある。
 一方黒線の部分は同じ個体(生物)ならば構造は、全く同じである。したがって「不変部」(Fc)という。
不変部の根元のウの部分を結合させる「Fcレセプター」という構造が、好中球やマクロファージの細胞表面には存在する。
したがって抗体と結合した抗原(オプソニン化された抗原)を、好中球・マクロファージはそのFcレセプターでウの部分をつかまえて丸ごと飲み込む。

なおポリペプチド鎖にはアミノ基末端(N末端)、カルボキシル基末端(C末端)がある。4つのポリペプチド鎖とも、
図でアのほう(上のほう)がすべてN末端、ウのほう(下のほう)がすべてC末端である。

★設問3 抗体の可変部の多様性を作るのは、
抗体を産生する各B細胞において遺伝子の再編成が起きることによることを明らかにした学者は誰か?




(考える)




利根川進

★設問4 ジフテリア・破傷風菌の感染動物の血清中に抗毒素(今でいうう抗体)を発見し、血清療法を確立した人は誰か?2人答えよ。




(考える)




ベーリング・北里柴三郎

★設問5 図のように抗体の可変部はH鎖でV領域・D領域・J領域の3ヶ所、L鎖でV領域・J領域の2か所、
計5か所のアミノ酸配列を指定する遺伝子が関与する。B細胞の成熟過程で各領域に関係した複数の遺伝子のうち、
各領域1つの遺伝子のみが選びだされ再編成され、他の遺伝子が捨てられるからである。
 未熟なB細胞のH鎖V領域に300、D領域に20、J領域に6、L鎖V領域の300、J領域に6の遺伝子があるとすると、何種類の抗体が生成できるか?計算式を答えよ。




(考える)




300×20×6×300×5=5400万種類

解説
実際は各領域の接続面に変化が起きることなどにより更に多様な抗体を作るB細胞が生まれいる。B細胞1つ1つが作る抗体は同じで、B細胞自体が多様であるということを理解しておいてほしい。

★発展学習 抗原抗体反応における凝集・沈殿反応のおきやすさ。

病原体表面・毒素などに抗原(抗体結合部位)が1か所しかない場合、
凝集・沈殿反応は起きにくい。
2か所以上ある場合は起きやすいが、抗原と抗体の量がある程度の比率で存在したほうが起きやすい。
 抗原が多すぎても、抗体が多すぎても起きにくくなる。
 これは、男女が校庭一杯にちらばり、「男の子は女の子と、女の子は男の子としか手をつなげない」
という約束をしてフォークダンスでもすることを思い浮かべるといい。男子と女子を、どちらかが抗原、どちらかが抗体ととらえるわけである。
片手だけ(抗原1か所)ではネットワークができない。両手(抗原2か所、抗体はもともと抗原結合個所が2か所)
どうしで同数に近い、男女で手をつなぐとネットワークができやすい。しかし男ばかりが多くても、
女ばかりが多くてもネットワークはできにくい。
 抗原抗体反応もこう考えるとロマンチックですね。