好気呼吸クエン酸回路はミトコンドリアのマトリックスで行われ、その化学式は

2C3H403(ピルビン酸)+6H2O
→6CO2+20H+エネルギー(2ATP、熱)

です。

「ピルビン酸を水を加えながら料理し、CO2を捨てながら、次の電子伝達系で使う20Hを取り出す反応(そして2ATP生成する反応)」です。

酵素としては「脱炭酸酵素」(カルボキラーゼ)と「脱水素酵素」(デヒドロゲナーゼ)が活躍しています。

詳細に見ますが、その際分子式全体でなくCの数だけに注目してよいです。
C6(グルコース)一分子を分解した2分子ピルビン酸(2C3)が出発点となります。
途中の物質名には知らなくてよいものもありますが、まずは全体を示した後で説明します。


2C3ピルビン酸

↓→2CO2
↓→4H
2C2アセチルCoA(活性酢酸)

↓←回路最終産物
↓ 2C4(オキサロ酢酸)と結合

↓←2H20

2C6(クエン酸)

2C6(イソクエン酸)

↓→2CO2
↓→4H


2C5(αケトグルタル酸)
 (オキソグルタル酸)

↓→2CO2
↓→4H

2C4(スクシニルCoA)

↓←2H2O
↓→2ATP

↓ 
2C4(コハク酸)

↓→4H

2C4(フマル酸)

↓←2H20

2C4(リンゴ酸)

↓→4H

2C4(オキサロ酢酸)
(振り出しに戻って活性酢酸と結合)

●ポイント
(スクロールを戻しながらご確認ください)

1、脱炭酸反応(→2CO2)が3か所起き、その過程でC原子数が減っている。
 2C3→2C2→(2C4と結合し)→2C6→2C5→2C4

2、脱水素反応が5か所で起き計20Hが出ている。
(脱水素反応の場所も正確に知る必要はない。「5か所計20H」という事実が重要)

3、2を持続するため、途中3か所で2H20を補給している。
(H20の追加の場所まで正確に覚える必要はなく「計6H2O追加」の事実のみでよい)

4、1か所のみ2ATPが作られている

●09年独協医大設問
「クエン酸回路をひとまわりするごとに1分子のピルビン酸あたり(1 )分子の水が加わって
( 2 )分子のCO2が生じるとともに( 3 )Hが切り離され、( 4 )分子のATPが生成される」


(しばし考える)


解答
「1−3 2−3 3‐10 4−1」
解説「1分子のピルビン酸あたり」という表記に注意。先の私の説明は2ピルビン酸を出発点とした説明なので、「1分子ピルビン酸あたり」という問題指定を見落とさないように。

●コハク酸→フマル酸の4H放出は補酵素がFAD
5か所中4か所の4H放出を受け止める補酵素はNADで2NADH2となります。
ただ1か所(コハク酸→フマル酸)のみの4H放出を受け止める補酵素はNADの親戚のFADで2FADH2となります。
20Hは補酵素まで表記すると、20H(8NADH2,2FADH2)となります。

●ツンベルク管実験
 クエン酸回路の1か所
  コハク酸+FAD→フマル酸+FADH2
の脱水素酵素の反応を可視化したものがツンベルグ管実験です。
 主室に「酵素液(ニワトリの胸筋をすりつぶしたもの・FADも含む)」
 副室に「コハク酸ナトリウム」と「Mb(青色素メチレンブルー)」を入れ、
空気を抜いた上で混ぜます。
 Mbは電子伝達系の代理となるもので、FADへの水素授受の次に水素を受け取ります。
結果的には、

コハク酸+Mb→フマル酸+MbH2
となり、MbH2(還元型メチレンブルー)は無色なため、
「青色→無色」の変色で
「コハク酸+FAD→フマル酸+FADH2」
と同様なことが起きたことが可視化できます。



なお実験後空気を入れると、O2がMbH2からH2を奪うので再び青(Mb)に戻ります。