カエル(他イモリなど両生類は同様)の受精卵から、背腹軸形成に至るまでの卵内の動きが解明されており、それを部分的に問う入試問題も出題され始めている。実は10数段階ぐらいの動きなのだが、そのうち4段階を示すことで、だいたいの流れが理解できる。出題された時のために背景知識として理解しておこう。(物質名は無理に覚えようとしなくてもいいです。流れがわかれば大丈夫)







@未受精卵には表層・コア・植物極側物質がある。
 地球に「地殻とマントル以内(マントル・外核・内核)」があるように、カエル未受精卵内は表層とコアからできている。表層の動物極側は黒く、植物極側は白い。植物極側のコアにはvegT、表層にはディシェベルド(dishevelled)という物質がある。
 精子は動物局極側から侵入し、核のみでなく中心体も含む中片や尾部も侵入する。

A表層回転によるディシェベルド移動
 精子が受精すると、侵入した精子の中心体から微小管が伸び、表層とコアのずれを起こす。コアに対して表層が30°(精子侵入点側では植物極向きに、反対側では動物極向き)回転し、精子侵入点の反対側で表層の黒い部分からはずれた部分が「灰色三日月環」として見える。
 またディシェベルドは精子侵入点の反対側まで移動する。
 卵内すべてに未受精卵の段階でβカテニンが存在したが、それは通常は分解酵素によってやがて分解される。しかしディシェベルドのある側では、その作用の影響で分解酵素が働かずβカテニンが残る。その残ったβカテニンは核内に移行し、遺伝子発現に影響する調節タンパク質として働く。

B「背腹軸」とニューコープセンター
 βカテニンが精子侵入点と反対側に多く残る(図のオレンジ)。植物極側コアに存在していたVegTはそのまま存在し続ける。両者が重なった部分で、両者の影響で、ニューコープセンターという中胚葉誘導をする部分が生じ、その誘導でその直上にシュペーマンオルガナイザー(原口背唇)ができる。

C背腹軸と濃度勾配
 やがて腹側には遊離したBMPという物質が多くなり、背側は少なうなる。また背側には、ノーダルとその影響下に作られるコーディンが増え、腹側には少なくなる。この濃度勾配が遺伝子発現に影響を及ぼし、背腹の特徴が分化していく。