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問1 ヒトの受精の瞬間のしくみは(昨日メルマガで説明した)ウニの受精の瞬間のしくみと類似しているが、「しくみ」「用語」が少し異なる。それを意識しながら以下の図をもとに文章の@〜Gに適語を入れよ。







 



 








 

 ヒトの排卵された卵(卵子)は二次卵母細胞である。その細胞を直接覆う生体膜は@と呼ばれ、その外にAが存在する。Aの外には、卵巣において二次卵母細胞の周りに存在した卵胞(ろ胞)細胞がそのまま付着しており、その細胞の間に基質がある。これらをB細胞・B基質という。B基質にはヒアルロン酸が多い。@の内側にはCがあり、ウニ同様、先体反応後の囲卵腔形成に働く。
 精子頭部は精巣や輸精管の中で被膜で覆われるが、子宮や卵管を経過するときその被膜がはぎとられ、受精ができるようになる。これを「受精能獲得」(capacitation)という。体外受精の際はこのcapacitationをシャーレ内で行う必要がある。
 capacitationされた精子の構造を見てみると、精核の前方に図でオレンジで示された「先体」(acrosome)がある。先体の膜のうち前方の膜を
D、後方の膜をEという。精子頭部がB基質・B細胞の部分に到達すると、Dが破れ、先体に含まれた物質、たとえばヒアルロニダーゼが放出され、B基質を溶かして進む。Dの崩壊により、今度はEが精子の先端部となるが、そこにはFのような物質があり、それがAを溶かし、精子が卵(二次卵母細胞)に到達する最後の過程を担う。
 なお、Aは@との間に囲卵腔を形成することだけでなくA自体の性質変化によって、2つ目以降の精子侵入を防ぐ。
 Aが含む物質をGといい、Aがラテン語由来の英語でzona pellucidaであることから、ZPと名称を付け、ZP1、ZP2、ZP3の3種類がある。





@卵
A透明帯(zona pellucida)
B卵丘(らんきゅう)
C表層粒(顆粒)
D先体外膜
E先体内膜
Fアクロシン(acrosin)
G透明帯物質

解説
Bは放線冠ともいう。DEFの名称が入試で聞かれることは少ないが、
流れを知っておいたほうがよいのであえて設問にしたので流れを捉えてほしい。



問2 ZP1、ZP2、ZP3のうち、受精前は精子を惹き付けるが、受精後は性質が変化し、精子を引き付けなくなる物質はどれか?





ZP3

解説
 溶液中にZP1・2を加え、そこに透明帯つきの二次卵母細胞を起き、
精子をかけると、精子は透明帯のみに存在するZP3にひきつけられ受精するが、
溶液中に未受精卵由来のZP3を加えて同じ実験をすると、精子は溶液中に散在するZP3に結合して本体の透明帯にあまり近づかず受精が起きない。しかし同じZP3でも受精卵由来のZP3を加えた場合は、
透明帯の未受精卵のZP3のみにひよよせられ受精がおきる。
以上の流れが実験考察問題として出題されることが多いので
「未受精卵のZP3のみが直接精子を引き付ける」ということは知っておいおいたほうがよい。