1970年まで、がん研究はがんの外因(化学物質・ウイルス・放射線)との因果関係中心でしたが、
1970年代から、内因としての「がん関連遺伝子」が解明されてきます。

●がん関連遺伝子(がん原遺伝子・がん遺伝子・がん抑制遺伝子)

細かい用語の整理をしておきましょう。
「がん遺伝子」(oncgene)は無限増殖や転移能を獲得した
「がん細胞」(cancer cell)において過剰発現している遺伝子です。
もともとの通常細胞にある時は「がん原遺伝子」(proto-oncogene)
といい、生理的な細胞の機能を担っています。
「がん原遺伝子」のことを含めて「がん遺伝子」と言う場合も多いです。
細胞には細胞分裂を抑制したり、
がん化の傾向にある細胞の細胞死(apoptosis、アポトーシス)させ、がん化を抑制する遺伝子
「がん抑制遺伝子」(tumor suppressor genes)があります。
 これらを総称して「がん関連遺伝子」ということもあります。
「がん遺伝子」を「がん関連遺伝子」と同様な総称の
意味で使うことも多くなっています。

●腫瘍(tumor)とがん(cancer)
周辺組織と関係なく増殖した塊を腫瘍(tumor)といい、
局部的に大きくなるだけの良性腫瘍(benign tumor)と、周囲の組織に浸潤(invation)し、他の臓器に転移(metastsis)
する可能性のある悪性腫瘍(malignant tumor)とに分けられ、
悪性腫瘍をがん(cancer,carcinoma)ともいいます。
ほくろ(mole,mark)も良性腫瘍の一種です。

「腫瘍=良性腫瘍+悪性腫瘍(がん)」

なのです。

●がん関連遺伝子研究史
・1971年 「正常細胞+がん細胞」の融合細胞が
「正常」になる実験結果から、
正常細胞にはがん化を抑制している遺伝子(がん抑制遺伝子)が存在していると予測される。

→発がんの2ヒット理論が提唱される。

(2ヒット理論とは、両親から受け継いだ2つのがん抑制遺伝子が、2つともヒット(突然変異)して初めてがん化に向かうという説)

・1975年 がん原遺伝子の発見
(RSV(ニワトリ肉腫ウイルス、
あしたのためのその58・59を再読ください)が感染細胞をがん化させる遺伝子を、未感染のニワトリ正常細胞が保持していること発見)

・1981年 がん日本人の死因トップに(心臓疾患をぬかす)
・1982年 ヒトでの代表的ながん遺伝子発見 
(ras遺伝子(rat sarcoma virus、
ラットに肉腫を起こすウイルスの持つ遺伝子)がヒト大腸がん細胞も持つと発見)
・1986年 がん抑制遺伝子Rb発見
 家族性の網膜芽細胞腫(retinoblastoma)の遺伝現象が、
劣性遺伝であったことから、普段がんを抑制している優性遺伝子の存在がわかった。

・1987年 がん抑制遺伝子p53の突然変異ががん化を促進すること判明

・1996年 遺伝性腫瘍の遺伝子診断リストをアメリカ臨床腫瘍学会が発表

・2003年 ヒトゲノム配列完全解読

・2008年 国際がんゲノムコンソーシャム
(がん遺伝子研究国際協力)スタート