★2013年大阪大問題(改・一部)

DNAの配列が全く同じであっても遺伝子の発現に違いがみられることが少なくない。
この要因の1つにDNAのメチル化(methylation)という現象が関わっている。
 DNAは4種類の塩基から構成されているが、このうちcytosine(C)のpyrimidine環の
5位の炭素原子にメチル基が付加されてmC(メチル化シトシン,5-Methylcytosine)と
なっていることが見られ、主にこれをDNAのメチル化(DNA methylation)と呼んでいる。
Cのmethylationは多くの場合、DNAの中でも
CG dinucleotid配列部位(C-phosphodiester bond-G、CpG island)のCで生じる。
たとえばATTGC「C」GCTCAGT「C」GTTという配列があった場合、
「」のようにGの前のCはmCとなりうる。
但し、「C」Gならば、必ずメチル化されるわけではなく、「C」Gでもメチル化されない部分もあり、組織によるが「C」Gがメチル化される確率は50%程度であることが多い。

たとえば
「C」GT「C」GT「C」GCA「C」G

「mC」GT「C」GT「mC」GCA「C」G

ようになる。

「」以外のように、Gの前ではないそれ以外のCはメチル化されない。
(GCのようにGの後もメチル化されない)

promotor部位にCpGが存在する場合には、
転写調節タンパク質のpromotor部位への結合がCのメチル化により抑制されることから、
DNA methylationが遺伝子の発現に関与していると考えられている。DNA methylationの
状態は一般的には細胞ごと異なるが、株化した細胞(細胞株)では全て同一であると
考えられる。
 DNA methylation検出方法に、亜硫酸水素ナトリウム(重亜硫酸ナトリウムNaHSO3)を
用いる方法がある。NaHSO3でDNAを処理すると、CはU(uracil)に変換されるが、mC
は変換されずmCのままである。処理DNAをPCR法で増幅した場合に、UはT(thymine)
として増幅されることから、どのCがmCであったかを判別することや、もとのDNAに
存在するCpGのCそれぞれについて何%がmCであったかがわかる。

問1細胞から取り出した次のDNA部位

CGCTGCTCGAについて
NaHSO3処理を行わずにPCR法で増幅した場合の塩基配列を可能性のある配列を全て記せ。
但し、メチル化された場合でもそのことは書いていない。





CGCTGCTCGA

解説
メチル化された部位「mC」が存在しても、メチル化部位は塩基間結合以外の部位なので
無処理ではCとして認識され、PCR法では塩基配列そのままで認識増幅されていく。

問1細胞から取り出した次のDNA部位

CGCTGCTCGAについて
NaHSO3処理を行った上で、PCR法で増幅した場合の塩基配列を可能性のある配列を全て記せ。
但し、メチル化された場合でもそのことは書いていない。
を記せ。


@ TGCTGCTTGA
A TGCTGCTCGA
B CGCTGCTTGA
C CGCTGCTCGA

解説
 もとのDNAをメチル化パターンで考えていくと
@ 「C」GCTGCT「C」GA
A 「C」GCTGCT「mC」GA
B 「mC」GCTGCT「C」GA
C 「mC」GCTGCT「mC」GA
の4パターンがありうる。
「C」は
「C」→「U」→「T」
で「T」になり

「mC」はそのままCとして
増幅されるので
@ 「C」GCTGCT「C」GA

TGCTGCTTGA

A 「C」GCTGCT「mC」GA

TGCTGCTCGA

B 「mC」GCTGCT「C」GA

CGCTGCTTGA

C 「mC」GCTGCT「mC」GA

CGCTGCTCGA

の4パターンとなる。
無処理DNAとNaHSO3処理DNAを比較すると
メチル化率がわかり、朝の問題のように
疾病とpromotor(遺伝子発現調節部位)のメチル化
比率の関係を調べることができる。