とは、研究者が作成するある遺伝子に関し、両方とも欠失させたマウスのことであり、研究者はそのノックアウトマウスで失われる性質から逆にもとの正常遺伝子の役割を推定できる。
(逆にある遺伝子を付与したマウスのことをトランスジェニックマウスという)
 ノックアウトマウス作成手法の流れが詳細に出題される入試問題の頻度は高くはないとはいえ時折は出題されており理解しておいたほうがよい。以下問題ではなく、解説をする。
 (なお以下の方法は作成法の代表的な手法であるが、他の手法もありうるので一例と考えてほしい。)






 

マウスの黒毛・白毛の遺伝子(B黒、b白)と、研究者が注目しノックアウトさせたい遺伝子(正常A、欠失a)両方に注目する。ただし、研究者によっては、最終的にaa(ノックアウトマウス)を得ることが「目的」であり、Bbのほうはその途中でマウスを選別していくための「手段」であることに注目してほしい。AaとBbは連鎖しているものを使うことが多い。
 
@まずES細胞を使い、黒毛系統のマウスでA遺伝子の1つを研究者が人工的に欠失させる。遺伝子はBA/Baとなる。図では最終的に目的であるaを赤字にした。

A白毛で遺伝子正常の受精卵が発生した桑実胚ぐらいの割球を透明帯を除去して取り出す。

B、@Aを混合させる。
C、Bを胚盤胞(胞胚)まで発生させる。将来全体が胎児になる内部細胞塊の部分には、将来、神経堤細胞を経て色素細胞になる細胞群(図で青の部分)と、将来始原生殖細胞になる細胞群(図で赤の部分)がある。両者とも黒由来と白由来が混在していることが多い。
(ただ偶然白だけ、黒だけが集まっていることもある)
D仮親マウス(代理母マウス)の子宮に戻し子を産ませる。
Eできた子は、Cの理由により皮膚(色素細胞由来)の色は白黒混在のマウスとなっていることが多い。白黒まだらとなったこのマウスを「キメラマウス」という。
 これの雄を考えた場合、そのマウスが作る精子のもととなる始原生殖細胞も黒(Ba、BA)、白(bA,bA)由来が混在している可能性が高いため、それが減数分裂した精子は、Ba,BA,bAの3種類が混在する。
Fこれを正常の白マウス(bA,bA)の雌と交配させる。この雌が作る卵はbAである。

G、EFの交配で生まれた子は、図のように3種類の遺伝子型となる。
白毛となるbAbAは目的のaを含まない。黒毛となるBA,bAとBa,bAのうち、
Ba,bAの個体のみが目的のaを含む。BBが尾長、Bbが尾短となる性質のマウスで実験すると、黒、尾短のものが目的のaを含む。

H黒、尾短の雄、雌を選び交配させると1/4の確率でaa(ノックアウトマウス)が得られる。(この段階ではBによる区別はもう必要なくなるので図ではA、aのみで交配を表現した)

この1/4の確率でノックアウトマウスが生じるという「1/4」という数値はよく空欄補充で聞かれます。