今号は原点に帰って、分子生物学実験とは何0なのかということを考えてみたいと思います。

簡単にいうと、細菌(原核生物、主に大腸菌)のもっている能力や物質を活用しているものが多いのです。
したがって、
「それらのものは、そもそも細菌自体の中で普段はどういう働きをしているか?」との観点の出題がされます。

その点を整理しておきましょう。聞かれる点は主に4点です。

@plasmid
A抗生物質耐性遺伝子
B制限酵素
CDNAメチル化

これらが、細菌自体の中でどのような働きや役割を持っているか説明できますか?では図を見ていただいたうえで解説します。








 











 
@plasmid
細菌の本体DNAとは異なる小型環状DNA。本体DNAとは異なる小型なので、特定の機能の遺伝子のみ持つ。そして細菌間での移動も比較的容易。

A抗生物質耐性遺伝子
 plasmidにのっている場合は、その細菌にとって害である抗生物質を解毒する作用などで細菌にとっての「毒物」である抗生物質に抵抗していう。(分子生物学では人工的にのせる場合も多い)

B制限酵素
 DNAを特定塩基配列で切断する酵素。なぜ細菌がこれを持っているかというと、外来のvirus由来のDNAをいち早く切断し、「外敵」であるvirusから細菌を守る役割をしている。そもそもvirusの増殖を制限することから制限酵素(restriction enzyme)と命名されたのである。
Aと同様、細菌自身の防衛用なのである。

CDNAメチル化
 これは明日から取り上げる重要なテーマで、実は真核生物も行っているので、原核生物の専売特許ではない。
 細菌(原核生物)での役割としては、原核生物自体がDNAを切断する制限酵素を持っているため、本体DNAなどをメチル化することで制限酵素から本体を保護する目的である。

これらの細菌(原核生物)の能力を分子生物学実験ではうまく活用しているわけです。