本日市谷の前期ランチタイムは最終日です。ぜひおいでください。

★問1 1本のDNA(通常は2重らせんで1本と数える)をDNA増幅PCR法で10サイクル複製した時、DNAは理論上何本になるか?




答 1024本
(単純に2の10乗)

★問2 DNA1本鎖を1本と数える。その場合、あるDNA(二本鎖)PCR法10サイクルすると、DNAは何本となるか(1本鎖を1本と数える)







2048本
(最初から2重らせん=2本)とカウントするので
2×「2の10乗」


普通問1の数え方をするので、2のサイクル数乗で単純に考えればよい。しかし最近出題が増えているPCR法でのDNAの鎖の長さを厳密に仕分けして答える問題では、問2のような数え方をさせるので注意。必ず問題に書いてある。

問3 1本鎖を1本と数える。ある二重らせんDNAが10Kb(1万塩基対)の長さであった。その中には中央の6kbに目的の増幅したい遺伝子領域があり、両端に3kbと1kbの「のりしろ」がある。
2種のprimerは中央の目的の6kbの両端に相補的に結合するprimerである。
 PCR法で10サイクル増幅した時、何kbのDNA1本鎖がそれぞれ何本できるか?






10kb 2本
9kb 10本
7kb 10本
6kb 2026本(2048−2−10−10)

解説
 PCR装置すら見たこともないのが大部分である受験生にこのような出題が適切と私は思いませんが、残念ながら、この問題を「流行」のように増加しています。
結論いうと
nサイクルならば
10kb 2本
9kb n本
7kb n本
6kb(目的の長さ) 
2の「サイクル数+1」乗ー2−2n

絵で説明します。授業で黒板で手元資料つきで説明しても理解に時間がかかる問題ですので、メルマガですぐには理解できないかもしれませんが、図と説明を何度も読み返して理解してください。










最初の10kbのDNAのうち増幅目的の中央の6kbを「図左上」に「赤」で表記しています。両端の「のりしろは黒で左側(上の鎖では5´側)は3kb、右側(上の鎖では3´側)は1kbです。
5´→3´方向を「→」で表記しています。

primerを「桃」と「オレンジ」で短く表現しています。「桃」と「オレンジ」のprimerは「赤」の反対部分の端に結合するように設計しているため両側の鎖の「赤」部分の端に結合し、1サイクル目の複製が始まりますが、複製終了は末端までいくため、
「6+3」=9kbと
「6+1」=7kb断片となります。

さて9kb断片も7kb断片も
「primer+赤部分の複製+黒ののりしろ部分の複製」の3部分で構成されるのですが、primetrは赤に一体化したと解釈し、2サイクル目以降では、のりしろ複製の部分を9kbでは「青」
7kbでは「緑」で表記し、以下
9kbを「青」、7kbを「緑」で表記します。


1サイクルが終わった時点で
10kb(原本)2本+9kb1本+7kb1本となります。

さて2サイクル目は
10kb2本と
9kb1本
7kb1本が「原本」となります。

10kb2本(図の2列目の上下)
では1サイクル目と同じことがおきます。

9kb、7kbを「原本」として複製がおきたもの
(2列目の中央)
では図のように「赤部分」のみに純化した鎖が複製されます。

結果的に2サイクルが終わると

10kb2本
9kb 2本
7kb 2本
6kb2本
となります。

同様なことの繰り返しで
3サイクル終了すると(図の3列目)
10kb2本(原本の原本なので不変)
9kb3本(1サイクルごと1本増える)
7kb3本(サイクルごと1本増える)
6kb8本(16−1−3−3)
となります。
図で色で数字を書いた部分が合成された本数で
「青」3本。「緑」3本
「赤」8本と確認できますね。

一般式にすると
10kb 2本
9kb n本
7kb n本
6kb 2の「サイクル数+1」乗ー2−2n