酵素反応のグラフで「横軸ー基質濃度、縦軸ー反応速度」である場合を考えてみよう。
 横軸・縦軸にない「酵素濃度」は有限一定量である(実験途中で変化はしない)。
 「反応速度」について一昨日のメルマガで学んだように、反応時間が進むと基質が枯渇し、反応速度0になることもある。しかし、この種のグラフの前提として、反応速度とは反応開始直後の速度を示し、「基質の枯渇」は心配しなくてもよい。






 

●上のグラフ
 基質濃度を増やすと、酵素と基質が出会う(酵素基質複合体が形成される)ことが、基質の増加量に比例して増えていくので、最初はグラフは正比例となる。しかし「ア」のように途中で反応速度が上昇しなくなるのは、「全ての酵素が基質と常に結合した」状態となるため、それ以上反応速度が増えなくなるのである。
 酵素を人間で仕事をする作業員にたとえると、最初は原料(基質)を増やしていくとそれに比例して製品(反応生成物)の生成速度も増えるが、全ての作業員が常に原料に取り組んでいる(つまり「全員が手一杯」)の状態になると、それ以上に原料を持ってこられても、製品生産速度はそれ以上に増えなくなるようなものである。
 酵素濃度を2倍にすると、反応速度も2倍になるが、やはりそれでも、これまでの反応速度の2倍の所で「全ての酵素が基質と常に結合した」(「作業員全員が手一杯」)状態となり、グラフは横ばいとなる。

●下の図
 グラフの前提として、縦軸にも横軸にも書かれていない「阻害剤」は有限一定量である。
 アロステリック酵素の場合、反応を正に調節する調節物質(つまり促進する)では反応はもとのグラフよりも促進される。つまり左上となる。
 アロステリック酵素で反応を負に調節する調節物質の場合(青字点線)と、競争的阻害(赤字)はともに、もとのグラフより抑制され、右下のグラフとなる。その点は類似している。
 相違点を見ると、競争的阻害では基質濃度が高い時、反応速度はもとのグラフと一致するが、アロステリック酵素の負の調節物質の場合、少し低いままで維持される。
 競争的阻害では基質濃度が大きくなると競争的阻害物質の影響は無視できるぐらいとなるが、アロステイック酵素の場合は、いつまでも抑制されるので若干低い値のままとなる。