酵素のグラフを問う問題では、横軸と縦軸が何に設定してあるかに注目してほしい。横軸にされた量・時間は変化する(量的には増加し続ける)ものを示す。
 横軸・縦軸にされなかった値は「有限一定量」である。酵素のグラフの前提となるのはビーカーの中で反応を行わせたような値を計測できる実験を前提に考えられているので、基質や酵素の量も無限ではなく有限であることを踏まえておいてほしい。
入試問題では以上は「暗黙の前提」とされている。

また、特に横軸が時間の場合、時間(横軸)をどこまでとるかは出題者の自由である。たとえば最初の10分だけをグラフ化した場合と、180分ぐらいをグラフ化した場合、
同じ酵素反応でも、前者は基質は途中で枯渇しないのに対し、校舎は基質が途中で枯渇する可能性もある。
 その点にも注意しながら、今日はまず、「横軸ー時間、縦軸ー反応生成物量」のグラフを考えてみよう。今日は問題形式ではなく解説です。







 

★上のグラフ
 
 横軸にも縦軸にも書いてない酵素量や基質量は有限一定量である。
 一般に化学反応は高温ほど活発になるので、最初の瞬間の反応速度
(グラフでは原点から出発した直線部分の傾き)は、
60℃>35℃>20℃)と高温順に大きい。しかし60℃ではしばらくすると酵素が変性し失活するので、反応は停止し、反応生成物量は増加しなくなり不変となる。
 20℃や35℃では変性は起こらない(起こりにくい)ので、時間をかければ、それに比例して反応生成物は増えていき、正比例のグラフとなる。その際は温度が高いほど反応速度は大きく、35℃の傾き>20℃の傾きとなる。
 35℃で「ア」の部分で反応生成物量が増えなくなるのは2つの原因が考えられる。「基質が枯渇した」可能性と「酵素は時間をかけて変性した」可能性である。35℃は微妙な温度で、
ある種の酵素にとっては最適温度で変性はしないが、別の種の酵素では時間をかけると変性する温度である。「ア」の部分で、もう1回基質を添加し、生成物量が増え始めれば、
前者「基質の枯渇」が原因、生成物量が増えなければ「酵素の変性」と判別できる。

★下のグラフ
 20℃での実験なので、酵素の変性は考えられないので、グラフが後半で反応生成物量が増えなくなる原因は「基質の枯渇」である。
 酵素濃度を2倍にすると、基質と酵素が出会って反応する可能性が2倍となり、速度が2倍となるので、初期の反応速度(グラフの傾き)は2倍となる。基質量は「有限一定量」なので反応速度が2倍ならば、基質は半分の時間で枯渇し反応が終了する。反応が終了した時点の反応生成物量は「基質が有限一定量」なので同じ値となる。