★設問1 図の赤線(真ん中のやじるしのついた四角)の部分が、心臓拍動の際の、左心室の容量と左心室内圧(左心室の筋肉の圧力と解釈してもよい)の変化を示した図である。
(なお、赤線の周りの8つの黒四角は、あとの説明のために付与した図であり、解く時には気にしなくてよい)

 A・B・C・D点は次のどの段階を示すか?

 1、大動脈弁が開き始め、大動脈からの拍出が始まる点
 2、大動脈弁が再び閉じ、左心室の心筋が弛緩し始める点
 3、左房室弁(僧帽弁)が開きはじめ、左心房からの血液を受け入れ始める点
 4、左房室弁が再び閉じ、左心室の心筋が緊張し始める点















(考える)


A1
B2
C3
D4

解説
 設問としては順番通りに並べ、非常にわかりやすいようにした。今年の産業医大の問題の「左心室の圧容積曲線」を理解し、同じ問題が出た時に対処できるようにしてほしいからである。
 赤線の周りの四角図が心臓の状態を示す。

・面積が容積を示す
・壁の線の太さは心筋の圧力(内圧)を示す
・出る→は大動脈弁が開き、大動脈への拍出が行われることを示す。
・入る→は左房室弁が開き、左心房→左心室への血液の流入(輸入)が始まったことを示す。
・A点が左心室が体積も最大・圧力の最大で、これから血液を大動脈を押し出そうとしている瞬間と考える。

以上、5点をよく踏まえて赤線の周りの心臓・血液の動きをしっかり見て理解してほしい。

・A→B(駆出期)
  膨らみきった心臓が大圧力で大動脈に血液を押し出し、自らの容積は小さくなっていく時期。
 大動脈弁は開き、左房室弁は閉じる。

・B→C(等容性弛緩期)
 心臓が縮みきった状態で体積は増やさないまま緊張だけ緩めていく。
大動脈弁・左房室弁ともに閉じる。

・C→D(充満期)
 縮みきって緩みきった心臓に左房室弁が開いたことで、左心房から血液が流入し、緩んだ状態のまま容積が増えていく段階
大動脈弁は閉じ、左房室弁は開く

・D→A(等容性収縮期)
 膨らみきった心臓が、体積はそのままの状態で筋肉の緊張をたかめ、駆出期にいたる準備をする時期
大動脈弁・左房室弁ともに閉じる。

横軸の値(体積)が変化しないB→C、D→Aの縦方向への変化の際は、体積が変化しない=血液の出入りがない=弁は両方閉じていることに注意。

A−B(C−D)の値が心拍出量で、正常時は80mlである。

状態によってこの四角の縦・横の位置は変化し、心拍出量や心筋の圧変化は様々に変化する。
その変化のバリエーションは多いので、出題される時には、それを読みこめる出題があるはずである。
 ちなみにアドレナリン添加ではADの容積は変化せず、BCは減少する。
つまり拡張期の大きさは同じだが、できるだけ収縮期に心臓の容積を小さくする=絞り出すことで、
心拍出量を増やすのがアドレナリンである。