昨日までで「分類」分野は終了です。
8日から後期の内容に入っていきたいので、7日までの4日間は、前期の内容「代謝」でまだ説明しきっていない点を学びましょう。

今日は時に「光合成細菌」を説明します。(画像はなし)
 光合成細菌の具体名としては「緑色硫黄細菌」「紅色硫黄細菌」が有名です。
単なる「硫黄細菌」は後日説明する「化学合成細菌」であって種類が異なりますのでご注意ください。
 
●緑色植物型光合成と類似点
ー暗反応(カルビン・ベンソン回路)は共通。

●相違点
・明反応の原料(暗反応に送り出す水素を取り出す「水素源」)
がH20でなくH2S
・したがって廃棄物は6O2でなく12S
 (Sは二原子分子でないため)
・光合成色素はバクテリオクロロフィル
・原核生物なので葉緑体という構造物はなく、進化的に細胞膜に由来する細胞内のバラバラの膜で明反応を行う。

式で示すと
6CO2+12H2S+エネルギー
→C6H1206+12S+6H20
(602が12Sになっただけで6H20放出は同じだとご確認ください)

●「H2S存在、低酸素、光当たる」の3条件の湖水中層・汚水・硫黄温泉に存在。
 光合成細菌は嫌気性であり、水素源があるH2S(硫化水素)存在下で光が届く場所に生育します。
 硫黄温泉など硫黄が高濃度な場所では普通の緑色植物型光合成の緑藻・ラン藻などが生育できないため、光合成細菌が生育しやすい。
しかし、一般の湖の表層では、光が届く場所は緑色植物型光合成をする緑藻・ラン藻なども生育し、
光合成をして02を放出するので、「嫌気性」である光合成細菌は表層(光合成を盛んにするので「生産層」と呼びます)に住みにくくなります。
 一方光の届かない湖底は分解者の活動で含硫アミノ酸を含むタンパク質を分解しH2Sが多くなり、
分解者の活動で酸素が消費され嫌気状態となっています。(「分解層」と表現します)。
 しかし湖底すきると光が届かないので光合成細菌は生育できません。

実は光合成細菌は分解層(湖底)と生産層(表層)の中間の水位に帯状に分布します。
・ぎりぎり弱い光が届く
・分解層の影響で嫌気状態
・湖底からH2Sが供給
の3条件がそろうからです。
 そしてこの湖「中層」の光合成細菌の存在は分解層と
生産層をちょうど隔てる壁のような役割を果たしているとも言われています。
(広島大で出題)

●生ゴミ(野菜残さなど有機物廃棄物)分解などへの応用が研究されている
 大量に廃棄される生ゴミで腐敗臭を生むH2Sを分解していく方法の1つとして光合成細菌の利用が研究中ですが、
「光があたり」「嫌気状態」という2条件を作り出すのに工夫が必要でその考案が課題です。
 なお生ごみたい肥化などで注目されているEM菌(effective microorganism、「有用微生物」の略)は、
もともと光合成細菌を含む微生物群をまぶした土壌をかけると有機農業に有効だということを琉球大の比嘉教授が考案したのが始まりです。私もその研究は有効だし生ごみのたい肥化にも大きな意味があると思いますが、
ただこの10年は「EMが万能」という形で宣伝されていることに対しては少し冷静な目で見たほうがよいと考えています。

●ラン藻は原核生物だがH20分解の緑色植物型光合成
同じ原核生物でも、ラン藻は緑色植物型光合成でH20分解、02排出です。
葉緑体はありませんが、チラコイド膜に相当するものが細胞質内にあります。

●紅色(非硫黄)細菌とは(発展編)
 実は光合成細菌には以上述べた紅色硫黄細菌・緑色硫黄細菌などH2Sを使うのも他に,H2Sを利用しない「紅色(非硫黄)細菌」がいます。

 光合成明反応でHさえ供給できればよいので、それはH2OでもH2Sでもそれ以外のものでもいいのです。
 すると変わった方法として有機物からHを取り出して光合成をする生物がいます。乳酸などからHを奪います。
 (本当はこう単純ともいえない部分をあるのですが)式で示すと

6CO2+12C3H6O3(乳酸)
→C6H12O6+12C3H403(ピルビン酸)+6H20
とまります。「12H2O→6O2」の部分が「12C3H603→12C3H403」となったわけです。